August 15, 2008

貴志祐介『新世界より(上・下)』●

[ Japanese_Authors ]

 2008.1.23初版。書き下ろし長篇小説。なにしろ500ページぐらいのが二冊だからなかなか手が出せない。しかも時代は1000年後だ。未来だ。がちがちのSFだ。気合いを入れないと読めない。
 で、読み始めたら、案外すいすい進む。SFというかダーク・ファンタジーな感じで、あまり得意な分野ではないのだが、しかし引き込まれる。中身の説明はしづらいが、導入部はちょっとハリー・ポッターっぽくもあったりするので、さほど抵抗はないのではないかと。

★★★☆(2008.4.20 黒犬)

978-4-06-214323-3・978-4-06-214324-0

posted by Kuro : 00:51 | comments (0) | trackbacks (0)

金城一紀『SP 警視庁警備部警護課第四係』●

[ Japanese_Authors ]

 2008.3.10初版。フジテレビ系で2007年11月から2008年1月にかけて放映されたドラマ『SP』の脚本。
 金城一紀が書いている(原案・脚本)ってのを知らず、第1回は見逃してしまったのだが、それ以降は全部見た。けっこう面白いドラマだった。真木よう子はあれでブレイクしたもんなあ。
 で、ドラマ脚本を読むというのは、多少かったるくもあるんだけれど、一応見たことがあるものであれば記憶が呼び覚まされて楽しくもある。
 金城自身による脚注がついているんだけれど、これはちょっといただけない(ものが多かった)。こうこうしたかったんだけれども大人の事情で……みたいな言い訳なんか読まされてもなあ。どうせ書くんだったら、××メーカーがスポンサーだったので××を凶器にするわけにはいかなかったとか、はっきり書けばいいのに。まあ多少の付加価値がないと本としては成立させづらいのかもしれないが(おそらくはジャニーズ的な事情でスチール写真などもなし)。
 ま、あのドラマが好きだった人向けってことで。

★★★(2008.3.18 黒犬)

扶桑社 1400円 978-4-594-05554-7

posted by Kuro : 00:16 | comments (0) | trackbacks (0)

August 14, 2008

真保裕一『追伸』●

[ Japanese_Authors ]

 2007.9.15初版。初出「週刊文春」2006.11.16号〜2007.6.7号。
 全編手紙だけでつづられたミステリー。評判が結構よくて読んでみたんだが、そしてたしかに「がんばったな」とは思った気がするんだが、なんだか話そのものはあまり印象に残っていない。

★★☆(2008.2.25 黒犬)

文藝春秋 1429円 978-4-16-326280-2

posted by Kuro : 01:38 | comments (0) | trackbacks (0)

姫野カオルコ『ああ正妻』●

[ Japanese_Authors ]

 2007.3.30初版。初出「小説すばる」。
 瓶野比織子とか川田弘昌教授とか、龍王病院とか「文芸ほたる」とか「週刊マスト」とか、はたまた「しこめのいいわけ」という題名のベストセラーとか(!)、どっかで聞いたことのあるような固有名詞が頻出し、ってことはこの主人公小早川正人やその妻の雪穂なんかにもモデルがいるんじゃなかろうか、いるんだとしたら実におそろしいことであることだなあ、などと本筋と違う興味が湧いてしまうのであった。なんなんだこの小説は(笑)。
 バカ小説なんですが、寒々しい思いもさせられたりしました(女の必死さと男の愚かさに)。
 とりあえず不幸な結婚生活を送っている男と、幸せな結婚生活を夢見ている女に勧めておく。勧められても困るか。

★★★(2007.8.10 黒犬)

集英社 1600円 978-4-08-774851-2

posted by Kuro : 00:25 | comments (1) | trackbacks (0)

August 13, 2008

感想追加

[ update_info ]

予定日はジミー・ペイジ』に黒犬の感想を追加しました。

posted by Kuro : 23:23 | comments (1) | trackbacks (0)

May 01, 2008

海堂尊『ジーン・ワルツ』●

[ Japanese_Authors ]

 2008.3.20初版。初出「小説新潮」2007年6月号〜12月号。海堂“バチスタ”尊の新作。今度は産婦人科だっ。
 まあテーマがテーマなだけに、ミステリー部分より官僚批判のほうが読み応えがあるのはご愛敬。曾根崎“クール・ウィッチ”理恵がなにをたくらんでいるのか、おおよそのところは想像ついてしまうのだから仕方がない(しかしホントこの作者、カタカナの“二つ名”が好きだねえ……)。ただまあ、広げた風呂敷をどう畳むのか、その一点で最後まで飽きさせないのはさすが。
 それにしても、この国の医療はどうなってしまうんだろうねえ。

★★★☆(2008.4.29 黒犬)

新潮社 1500円978-4-10-306571-5

posted by Kuro : 00:09 | comments (0) | trackbacks (1)

April 30, 2008

盛田隆二『幸福日和』●

[ Japanese_Authors ]

 2007.10.31初版。初出「本の旅人」2005年12月号〜2007年7月号。
 恋愛小説、なんでしょう。ありがちといえばありがちな不倫小説でもある。
 短大卒、25歳の花織は出版社で編集総務の仕事――各種伝票をとりまとめたり、名簿・契約書を作成したり、編集部にかかわる種々雑多な庶務的業務全般――をしている。スキーで知り合った大手メーカー営業マンとの結婚もきまり、担当している編集部での女性誌新創刊も近づき、公私ともに多忙かつ充実している毎日だった。ところがどっこい、なんでもかんでも順風満帆ってなわけにはいかないもので……。
 その冒頭が2001年。そして最終の第六章は2006年。1章につき1年ずつ年が経過してゆく。
 いろいろな工夫が施されており、小説のなかに9.11とか拉致被害者の帰国など時事エピソードを紹介して、(おそらくは)時代性を意識した造りになっている。のだが、それって成功しているのか、そもそも正解なのか、微妙な気がした。
 帯に書いてあるから紹介してしまうが、婚約は破棄ということになり、花織は妻子ある男性との不倫関係におちいる。花織はたいへん物わかりがよくて、男性に離婚して私と結婚してなどと言い出さない。こういう「女の幸せ」がないとはいわないが、ずいぶんと男にとって都合がいい話だねえ。
《現代の愛のリアル》だそうだが、そんなもんなのか? 現実を考えれば、もっとシビアに検討しなくてはならないことがたくさんあるんじゃないのか? そりゃまあ最終的にああいうことにすれば《万感胸に迫》ったり《甘く哀し》くかんじたりする人もいるかもしれないが、それはむしろリアルじゃないからではないかと。『ありふれた魔法』とおなじような、後味の悪さがのこった。

★★★(2008.4.30 黒犬)

角川書店 1800円978-4-04-873804-0

posted by Kuro : 01:40 | comments (0) | trackbacks (0)