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January 26, 2007

ドン・ウィンズロウ『砂漠で溺れるわけにはいかない』○

「おまえのためにちょっとした仕事を用意した」二ヶ月後に恋人カレンとの結婚をひかえたニール・ケアリーにまたしても仕事が! いつものように義父グレアムを通じて朋友会から命じられた「ごく短期の、簡単な、仕事と呼ぶのもおこがましい雑用」とは、ふらりとラスヴェガスに行ったきり帰ってこなくなった86歳のボケ老人を連れ戻すというもの。突然赤ん坊をほしがり始めたカレンを置いてヴェガスへと旅立ったニールを待っていたのは、短期でも簡単でもない正真正銘の仕事だった。
〈ニール・ケアリー〉シリーズ最終巻。ほぼ年一冊というペースで書かれた作品の翻訳に13年もかかった事情ついては、巻末の、酔っぱらって書いたとしか思えない(いくらなんでもハジけすぎ)「訳者あとがき」にくわしい。
 ニールが確保を命じられた老人とは、エド・サリヴァン・ショーにも出たことのある元人気コメディアンのナッティ・シルヴァー本人。おもしろいことになるかも……なんて期待してかかる余裕のニール。だが、これがどうしてなかなか食えない人物で、年寄りぶってあわれを誘ったり、古い持ちネタを連発するなどして周囲を煙に巻き、ニールの手をすり抜けてしまうのだった。このナッティとニールの軽妙なやりとりをはじめ、恋人カレンとの赤ん坊をめぐる生々しい会話、敵対する男女弁護士の往復書簡など、いつもながら読みどころ満載の最終巻。ニューヨークの路上で養父グレアムに拾われたことに始まるニールの旅の、これが終着点だとしたらあまりにもさびしい。解説によると、ウィンズロウは「そう遠くない将来にこのシリーズを再開するつもりでいる」と語っているそうだから、また首を長くして待ちたい。

★★★★☆(2006.9.24 白犬)

"While Drowning In The Desert" by Don Winslow 東江一紀・訳 東京創元社/創元推理文庫 720円 4-488-28805-7

posted by Kuro : 01:46

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駄犬堂書店 : Weblog: ドン・ウィンズロウ『砂漠で溺れるわけにはいかない』○

投稿者 モンクレール 店舗 : December 2, 2013 10:34 AM

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