【長篇】
カリフォルニアの炎
歓喜の島
高く孤独な道を行け
ボビーZの気怠く優雅な人生
【短篇】
【エッセイ・NF】
California Fire And Life 4-04-282303-3
東江一紀・訳 角川書店/角川文庫 952円
2001.9.25初版。
カリフォルニア火災生命の火災査定人ジャック・ウェイドは炎の言葉を知っている。ひまを縫っては波に乗る筋金入りのサーファーが、ひとたび焼け跡を歩けば失火元と原因をぴたりと当てる。ある日、太平洋を見下ろす豪邸の火災現場を調査したジャックは、酒浸りの女主人が起こした単なる失火ではないことを確信、調査に乗り出す。
これは疲れた。なんでだろう。消防学校時代の回想か、保険金支払いの仕組みか、科学調査の数字のせいか、はたまたKGBか。あとがきに、ウィンズロウは保険調査員の職歴があり、数年がかり調査の末に、編集者の檄に応えてありのままを描き出したとあるが、ちょっと盛り込みすぎではないのか。なんせ読むのに時間がかかる。同じこってりでもニール・ケアリー・シリーズだったらすらすら読めるから不思議。寝正月向き。
★★★(2001.11.22 白犬)
Isle of Joy 4-04-282302-5
後藤由季子・訳 角川書店/角川文庫 952円
1999.9.25初版。ドン・ウィンズロウのスパイ小説。というとくくりが大きすぎるか。スパイ系恋愛小説とでもしておくか。
舞台はニューヨーク。1958年12月24日から31日まで。元CIA職員で北欧におった主人公が、退職して(だってNYが好きだから)、ジャズ歌手であるガールフレンドとNYに舞い戻る。調査関係のお仕事をしているんだけども、未来の大統領になりそうな上院議員の警護を頼まれて、陰謀に巻き込まれる、っつうような話です。各章タイトルはジャズナンバーのタイトルがつかわれていて、なかなか雰囲気がよろしい。
ケアリーのシリーズにくらべると、もうちょっとほろ苦く(いやケアリー君もじゅうぶんほろ苦いのですがね)オトナ風味、かな。1958年なんて、想像もつかない大昔なんですが、楽しめました。しかしこの主人公がケアリー・シリーズにも顔を出しているとは(未訳)。はよ読ませろという感じ。
★★★★(1999.10.8 黒犬)
Way Down On The High Lonely 4-488-28803-0
東江一紀・訳 東京創元社/創元推理文庫 740円
1999.6.25初版。みなしご探偵《ニール・ケアリー》シリーズ、お待ちかねの第三弾。
すでに第一作第二作のあらすじなど銀河のかなたに消えてしまい、おぼろげにしかおぼえちゃいないけど、第二作の終わりから話は始まる。
なんだかんだでようやくアメリカに帰ってきたニールだが、探偵稼業に復帰できるかどうか、息子が離婚した夫に誘拐されたという婦人からの依頼を受けることになる。行方をたどって高く孤独な地にある牧場を発見。潜入捜査はお手の物ってわけで、身分を隠して、気のいい牧場主のところに居候することになる。いなくなった赤ん坊を探すうちに、なにやらきな臭い秘密組織がかかわっているらしいことが明らかになり……というような話。
初登場のときの気弱な少年から、あれこれ事件を経験して、いまではずいぶん立派な青年になったわけですが(そりゃあれだけの苦境をくぐりぬけたりすれば変わりもしよう)、あいかわらず素直でいい子なニール。かなり長い話ではあるが、飽きさせずどきどきさせる筆力はさすが。「ボビーZ」でも思ったんだが、このウィンズロウという作家の力量は相当なもんです。まだシリーズ2作が残っているので、はやく訳出されないものかなあと期待します。
★★★★☆(1999.7.23 黒犬)
The Death and Life of Bobby Z 4-04-282301-7
東江一紀・訳 角川書店/角川文庫 780円
『ストリート・キッズ』でヒットを飛ばした作者の、翻訳最新刊。
これ、サイコー。すげえおもしろい。麻薬王ボビーZという人がおりまして、ひょんなことからその替え玉をやらされることになったチンピラが、八方ふさがり七転八倒抱腹絶倒ジェットコースターなハメにおちいるわけです。うー、説明などしたくないわ。とりあえず読め読め。ほんとは時間をまとめて一気に読みたかったな。物語展開も、主役脇役のならず者たち――もちろん“キット”もだけど――も、一級品。娯楽小説の王道でしょう。映画化権も売れたそうで、これまた楽しみです。
この夏いちばんのお勧め、と断言してしまいましょう。
★★★★★(1999.6.15 黒犬)
last updated : 2003/2/5
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