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August 09, 2006

重松清『小さき者へ』●

 2006.7.1初版。単行本、2002年10月毎日新聞社刊。初出は「サンデー毎日」。
 まあね、いつもの重松清ですから。やられるのわかってて読んでるこっちがわるいんです。重松清節満載の短篇集。
 祖母(自分の母親)にないがしろにされる長男を見つめる父親(「海まで」)。親が離婚したという同じ境遇ある小学生の男女(「フイッチのイッチ」)。登校拒否の息子にあてた父親の手紙(「小さき者へ」)。高校を中退するという娘にとまどう元応援団長の父親(「団旗はためくもとに」)。商売に失敗し妻子を実家に帰らせて、それでもまだ決断できないでいる父親(「青あざのトナカイ」)。問題をかかえる子供たちを甲子園に連れて行く少年野球の監督(「三月行進曲」)。
「フイッチのイッチ」はほぼ子供側のみの話だが、ほかはいずれも父親のモンダイだったりする(「団旗〜」の語り手は娘だが、しかしやはり父親がメインだ)。やれやれ。いかにも、だ。どこからみてもシゲマツだ。しかし読めば引き込まれるし、下手すりゃ視界がぼやけることになる(ヤバかったのは「団旗〜」)。実際にじぶんの親だったら、彼らの子供だったらと考えるとたまったものではないが(もしかすると理想的父親像だと思っている「親」もいそうでオソロシイが)、それでもフィクションだから許せるというもの。ウザいと思うか好ましいと思うかは人それぞれだろうが、小説集としての出来は上々である。
 解説は華恵(hanae*改め)。うまい。まだ中学生ぐらいだよねえこの子。彼女の挑戦に、はたして重松清は答えられるんだろうか。

★★★★(2006.8.9 黒犬)

新潮社/新潮文庫 629円 4-10-134918-5

posted by Kuro : 02:12

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