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April 30, 2008

盛田隆二『幸福日和』●

 2007.10.31初版。初出「本の旅人」2005年12月号〜2007年7月号。
 恋愛小説、なんでしょう。ありがちといえばありがちな不倫小説でもある。
 短大卒、25歳の花織は出版社で編集総務の仕事――各種伝票をとりまとめたり、名簿・契約書を作成したり、編集部にかかわる種々雑多な庶務的業務全般――をしている。スキーで知り合った大手メーカー営業マンとの結婚もきまり、担当している編集部での女性誌新創刊も近づき、公私ともに多忙かつ充実している毎日だった。ところがどっこい、なんでもかんでも順風満帆ってなわけにはいかないもので……。
 その冒頭が2001年。そして最終の第六章は2006年。1章につき1年ずつ年が経過してゆく。
 いろいろな工夫が施されており、小説のなかに9.11とか拉致被害者の帰国など時事エピソードを紹介して、(おそらくは)時代性を意識した造りになっている。のだが、それって成功しているのか、そもそも正解なのか、微妙な気がした。
 帯に書いてあるから紹介してしまうが、婚約は破棄ということになり、花織は妻子ある男性との不倫関係におちいる。花織はたいへん物わかりがよくて、男性に離婚して私と結婚してなどと言い出さない。こういう「女の幸せ」がないとはいわないが、ずいぶんと男にとって都合がいい話だねえ。
《現代の愛のリアル》だそうだが、そんなもんなのか? 現実を考えれば、もっとシビアに検討しなくてはならないことがたくさんあるんじゃないのか? そりゃまあ最終的にああいうことにすれば《万感胸に迫》ったり《甘く哀し》くかんじたりする人もいるかもしれないが、それはむしろリアルじゃないからではないかと。『ありふれた魔法』とおなじような、後味の悪さがのこった。

★★★(2008.4.30 黒犬)

角川書店 1800円978-4-04-873804-0

posted by Kuro : 01:40

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