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February 12, 2007

盛田隆二『ありふれた魔法』○

“リアリズムの名手”盛田隆二の書き下ろし長篇。
 城南銀行五反田支店次長の秋野智之は44歳。ふたつ年上の妻と間に三人の子供がいる。家庭生活は円満で、仕事も順調である。そんな男が人生の予定を狂わすほどの恋をする。相手は26歳の部下、森村茜。顧客のクレーム処理で同行したのをきっかけに二人は付き合うようになる。
 これはこれは。絵に描いたようないい上司いい夫である男と、これまたケチのつけようのないくらいまじめで正直な女の不倫話である。周到で破綻のない不倫。銀行員の話だから不倫資金の出所まできちっと計算が合っている。理不尽な横やり(というのもへんだが)さえ入らなければ不倫なりに成就したんじゃないのかとさえ思える。生きるの死ぬのみたいなのがいいってわけじゃないけど、これほどご清潔な話もいまどきめずらしい。河野多惠子でも目指しているのか。わからん。

★★★☆(2006.10.20 白犬)

光文社 1600円 4-334-92517-0

posted by Kuro : 00:21

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