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February 11, 2007

マイクル・コナリー『天使と罪の街(上・下)』○

 あの人の死を調べてもらいたい――あいかわらず過去の未解決事件を見直す日々を送るボッシュのもとに、不審死を遂げた友の妻から調査依頼が舞い込む。事件現場で手がかりを得、ネヴァダの砂漠へと旅立つボッシュ。そのころ砂漠では多数の埋められた遺体が発見され、FBI捜査官レイチェル・ウォリングが招致されていた。これはレイチェルを名指ししてきた猟奇殺人犯、ポエットの犯行なのか。ボッシュとレイチェルはともにポエットの影を追う。
 これはすごい。ボッシュシリーズ以外の二作品、元FBI心理分析官テリー・マッケレイブの『わが心臓の痛み』『夜より暗き闇』、そしてFBI捜査官レイチェル・ウォリングの『ザ・ポエット』の続きである。未読でもじゅうぶん楽しめるが、本作の前にこの3作品をお読みになることを強くおすすめしたい。
 シリーズものも最後のほうになるとやたらと内輪受けじみてつまらない作品が見られるものだが、本作にそうした心配は無用である。意外な人物をカメオ出演させたりなどのお遊びもありはするが、ファンサービスもそこまでであろう。はからずも絡まり合ったニつの事件にボッシュの手法できっちりケリをつけ、かつ希望や可能性を残しておわる。ストーリーに妥協は感じられない。本シリーズは全12作で構想されていたというが、「どうやらおわりそうもない」という、うれしい噂もあるようだ。心して次作を待ちたい。
 本作は〈ハリー・ボッシュ〉シリーズとしては9作目だが、訳者の古沢氏は番外編とされる『夜より暗き闇』を入れて10作目としている。ただでさえ似たような邦題が多いうえに、どれがどの話だったかこんがらがっちゃってワケわかんなってる読者も少なくないと思われるので、改めて調べなおしたうえで既刊リストをつくってみた。ご参考まで。

★★★★★(2006.10.26 白犬)

"The Narrows" by Michael Connelly 古沢嘉道・訳 講談社/講談社文庫 上・下各684円 4-06-275476-24-06-275493-2


posted by Kuro : 22:59

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