« ポール・オースター『ティンブクトゥ』○ | Blog Top | ピーター・ラヴゼイ『最期の声』○ »

April 01, 2007

J.D.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』○

 世界的なロングセラーの新訳。原著は1951年発表。ジェローム・デイヴィッド・サリンジャーは1919年マンハッタン生まれで今年88歳。ご健在です。日本では1964年に野崎孝訳で出版された『ライ麦畑でつかまえて』が決定版といわれている。わたしがむかし読んだのもたぶん野崎訳。最初から最後まで、いわゆる若者言葉がふんだんに盛り込まれた口語体で書かれているが、今回は「原著者の要請と契約の条項に基づき解説を収録できなかった」とのことで、訳者・村上春樹の翻訳苦労話などはナシ。つまらぬ。
 成績不振から16歳のときに「四つめくらいの」プレップスクールを放校になったホールデン・コールフィールド君の思い出話。両親に連絡が行く前に寮を飛び出し、自宅のあるニューヨークの街をうろついた3日の間に見たり聞いたり考えたりしたことを「君」と呼ばれる相手に話して聞かせるという形式である。見た目はいいがちょっと鼻持ちならない都会育ちのホールデン君。そばにいたらさぞかしうっとうしいと思われるが、当時の若者言葉満載の語り口調に十代なかばのひどく浮ついた気分を呼び覚まされたような気になる。笑い疲れたあとに必ずやってくる、あの寂寞とした空気を感じる。さすが全世界で読み継がれてきただけのことはある。

★★★★☆(2007.3.6 白犬)

"The Catcher In The Rye" by J.D.Salinger 村上春樹・訳 白水社(ペーパーバック・エディション) 820円 4-560-09000-9

posted by Kuro : 13:12

trackbacks

このエントリーのトラックバックURL:
http://dakendo.s26.xrea.com/blog/mt-tb.cgi/322

comments

北アルプス南部の乗鞍岳のすそ野にあり、林、草原、滝、池など多彩な自然を満喫できる。標高1500メートル前後。交通の便がよく、高低差も少なく「自然景観に手軽に触れられる」(村上真一さん)。

投稿者 ニューエラ 新作 2014 : June 13, 2014 11:51 AM

コメントをどうぞ。




保存しますか?