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February 19, 2006
リリー・フランキー『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』●○
2005.6.30初版、2005.12.25第17刷。なにしろ100万部をこえる大ベストセラーであります。そんなに売れてしまうと読みたくはないのだがなあ。でもしょうがないよなあ。バカエッセイはけっこう楽しく読んだしなあ。ってことで、仕方なく読んでみました。
ううう……。みんな感動するですかこういうのに。こんなんで、みんな泣いたりわめいたり(わめきはしないか)するんですか。そうですかそうですか。
帯には福田和也、みうらじゅん、福山雅治、その他の有名人、書店員、一般人の絶賛の言葉がびっしり。
いや、まあたしかに感動的なというか普遍的なお話ではありますよ。旦那に恵まれなかったけどユニークなお母さんと、そのお母さんに心配をかけつつ、最終的にはいっぱしの人になって、最後は東京に呼んであげて(リリー・フランキーは小倉出身)の、親孝行&強力なマザコンストーリー。日本人、好きだもんねこういうの。
というわけで以下は全面的に悪口になるので、感動した人は読み進まないのがよかろう。まあ数十万人が感動して涙してるんだから、いいよね、別に。
そもそもこれ、小説なんすか?
自伝的小説、ってやつなのかな。エッセイにしかみえないのだけれど、きっと小説なのでしょう。っつっても人名をちょこっとかえてあるとか、そのぐらいなんじゃないかという気もするけどね。
しかしなあ。
いきなり終盤のはなしに持ってっちゃいますが、まあ多くの人は自分の親の死に目にあうわけですわな。臨終の場に間に合うかどうかは別にしても、たいてい自分の親のほうが自分よりも先に死ぬ。今現在親御さんがお元気なかたはそういう経験がないわけだけれども、いずれはそういう経験をする。私も実はそういう経験をしている。
非常に近い経験であろうと勝手に思うわけだが、しかしそれでもリリー・フランキーの記述(というか彼自身の心象風景)に心を動かされるということはなかった(むしろ、彼の家に出入りしてお母さんのつくるご飯をごちそうになっていた人たちの悲しみ――それもまたリリー・フランキーによる記述ではあるのだが、事実を淡々と書き連ねている――のほうに反応した)。
それは、読者である私が、自分の経験が一番だと思っているから、ではない。それはない。たとえ自分の唯一無二の経験が一番だと思っていたとしても、他者の書く物に感動しないというわけではない。
たとえ完全無欠のマザコン男の慟哭であろうとも、たとえ「母に捧げるバラード」が何十年ぶりかに甦った!といいたくなるようなテイストであったとしても、手法によっては人を感動させうるだろうと思うのである。
ではなぜ感動できなかったのか。
ひとつには手法の問題。章がかわるたびに挿入される、ひとりごとというか説教というか感慨慨嘆自己陶酔にあふれて、意味があるんだかないんだかわからない“五月にある人はこう言った”パート。あれは全部とっぱらったほうがいい。
高校に入って親元から離れる際にお母さんが弁当に入れてくれた一万円札を見て涙を流す(p.133)場面などは――たとえそれが本当にあったことだとしても――涙をのんで割愛せにゃならんでしょう。「北の国から」じゃないんだからさ。
そういう余計な部分が多すぎて、小説の構成としてはぐずぐずになってしまっている。小説だというのならば、だけど。まあだからといって“長篇エッセイ”として売り出せるほどの有名人ではないんだろうけれど(一部では知られていても、芸能人ほどではない。それをやるなら郷ひろみや二谷百合恵のように、有名タレントでないとね)。
そしてもうひとつは日本語。日本語がダメ。ここらへんは多分に感覚的な問題なので、あまり気にならない人もいるんだろうし、内容がよければということなのかもしれないが、私としては少なくとも小説と銘打っている以上、きちんとした文章で伝えてもらえないのなら評価はできないという考え。
見た目(文字面の)もきたないんだよなあ。今どき、歌詞でもないのに、くの字点を使う人がいるとはおどろきだ。
彼のエッセイは嫌いじゃないんです。というよりむしろ好き。なんだけど、やっぱりこの作品は評価できない。まあ相田みつを嫌いの私とは相容れない作品だったってことで、どうぞご容赦を。
★(2005.1.20 黒犬)
100万部超の大ベストセラーにして「本屋大賞2006」大賞受賞作。今夏、フジテレビ系ドラマ化決定。いまさら、読んでみたわけです。
本書がこれほど親しまれたのは、「オカン」という呼び方によるところが大きいように思う。そもそもオカンとは関西地方の方言ではないのか。昭和38年に福岡県で生まれた男及び周辺が母親のことをオカン、父親をオトンと呼んでいたとは思えない。じっさい作品中でも主人公は幼い頃、母親を「ママ」と呼んでいる。おとなになった男が照れ隠しに「おふくろ」などと言うところを、あえてコミカルな響きのあるオカンを選んだことで、とくに若い層に親しみやすい印象を与えるとともに、悲喜劇的効果をあげている。
んが。そもそも本書を小説として評価していいものだろうか。この本の成功は、リリー・フランキーという多才な人気者の意外な一面という要素抜きには考えられない。すぐれたタレント本として★2つ。話題作り以外にはすすめない。
★★(2006.5.1 白犬)
扶桑社 1500円 4-594-04966-4
- 扶桑社:東京タワー通信
- リリー・フランキーの公式サイト:ロックンロールニュース
posted by Kuro : 22:01
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