« 栗田有起『お縫い子テルミー』○ | Blog Top | リリー・フランキー『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』●○ »

February 15, 2006

栗田有起『マルコの夢』●○

 2005.11.10初版。初出「すばる」2005年5月号。第133回芥川賞候補作。
 マルコといっても母をたずねて……とかじゃない。例によって、どうにも不可思議な栗田世界の物語だ。
 就職浪人中で姉の住むパリへ仕事の手伝いにいった主人公。高級レストランにもぐりこんでアルバイトに精を出すが、料理に欠かせない日本産キノコの買い付けを命じられる。そのキノコというのがいっぷう変わっており……。
 肩の力の抜けた、なんともとぼけた味わいの作品。なかなか楽しい。

★★★☆(2005.12.30 黒犬)


 第133回芥川賞候補作。初出「すばる」2005年5月号。
 姉の仕事を手伝うためにパリへやってきた就職浪人の一馬は、食材の配達で行った三つ星レストラン〈ル・コント・ブルー〉のオーナーにスカウトされ、一も二もなく入店することに。担当は同店の名物料理に使われるキノコの管理。ある日、一馬はオーナーに「マルコ」を買いつけてきてほしいと頼まれる。マルコは日本原産だが、販売元の名前も場所も明かされていないのだという。
オテル モル」に引き続き、就職に困っている体温低そうな若者の話だが、今回の主人公は男。しかも世界をまたにかけての冒険譚である。後半、一馬の家族関係のごちゃつきが気になるが、種明かしに意表をつかれたので★プラス。
 栗田作品は「お縫い子テルミー」と「オテル モル」の2作も芥川賞候補になっているが、それぞれ『ハリガネムシ』と『介護入門』に惜敗。本作は『土の中の子供』に敗れている。インパクト不足か。次作期待。

★★★★(2006.1.18 白犬)

集英社 1300円 4-08-774788-3

posted by Kuro : 01:54

trackbacks

このエントリーのトラックバックURL:
http://dakendo.s26.xrea.com/blog/mt-tb.cgi/176

このリストは、次のエントリーを参照しています: 栗田有起『マルコの夢』●○:

» ● マルコの夢 栗田有起  from IN MY BOOK by ゆうき
マルコの夢栗田 有起 集英社 2005-11by G-Tools 日本で就職活動に失敗したカズマは、姉のつてでパリの三ツ星レストラン「ル・コント・ブルー」の... [Read more...]

トラックバック時刻: February 15, 2006 02:39 PM

» マルコの夢 [栗田有紀] from + ChiekoaLibrary +
マルコの夢栗田 有起 集英社 2005-11 パリで日本食材をレストランに卸す仕事をしている姉のに呼ばれ、フランスへ渡った一馬。取引先の三ツ星レストラン「ル... [Read more...]

トラックバック時刻: February 16, 2006 05:36 PM

» マルコの夢 (栗田有起) from 読んだモノの感想をぶっきらぼうに語るBlog
栗田有起はこれで4冊目。ひょっとしてオレはこの人のファンなのだろうか?いや、過去に読んだ3冊の感想を見る限り、ファンとは言い難い。ファンにはなりきれないのだけど... [Read more...]

トラックバック時刻: February 16, 2006 06:14 PM

» マルコの夢 from まっしろな気持ち
 キノコの世界をほんの少し覗いてきた。たかがキノコ。されどキノコ。それに魅了された人、それと共に生きる人、それのために生かされている人…そんな人々の、或いは人々... [Read more...]

トラックバック時刻: February 16, 2006 08:38 PM

» 栗田有起『マルコの夢』 from どこまで行ったらお茶の時間
マルコの夢栗田 有起 集英社 2005-11 売り上げランキング : おすすめ平均 まるで詩を読むようなリズミカルな文章に○ Amazonで... [Read more...]

トラックバック時刻: February 17, 2006 10:44 AM

» 栗田有起 「マルコの夢」 from ゼロから
マルコと聞いたらきっと人の名前を浮かべる人が多いはず。母をたずねて三千里のマルコ。ちびまる子ちゃんのマルコ。しかし、本書は人名でなく食品の名前だった。 [Read more...]

トラックバック時刻: July 19, 2008 09:06 PM

comments

こんばんは。TBありがとうございました!
栗田さんの作品世界は、かなり好みです。
この作品は、確かにちょこっとインパクトが弱いかもしれないけれど、
“あぁ、これは栗田さんの作品だ”という雰囲気が漂っているように感じました。
もっと読んでみたいと思わせる作家さん。
そんな存在に、私の中ではもうなっております!

投稿者 ましろ : February 16, 2006 08:27 PM

ましろさん、こんばんは。
なんだかこの人、若いのに独特な世界をつくってますよね。いい具合にちゃらんぽらんというかのほほんというか。
これからもけっこう楽しみです。
もうちょっと注目されてもいいと思いますねえ。

投稿者 黒犬 : February 16, 2006 11:49 PM

コメントをどうぞ。




保存しますか?