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February 07, 2006

宮部みゆき『孤宿の人(上・下)』○

「歴史読本」(2001年10月号〜2005年6月号)掲載分に加筆・推敲。装幀おしゃれ。上巻の表紙装画の“海うさぎ”が愛らしい。
 名前の「ほう」は阿呆のほう――江戸市中、内神田の建具商「萬屋」の若旦那が女中に生ませた子供ほうは、九つの年に金比羅詣でに出される。同行の女中に路銀を盗られ、港に置き去りにされたほうは、身柄を引き受けた和尚の世話で讃岐国丸海藩の藩医、井上家の下女となる。井上家の人々は頑是無い少女を分け隔てなく扱い行儀作法を教える。生まれてはじめて人の子らしい暮らしができるようになったほう。だが、そのしあわせは長続きしなかった。
 一方そのころ、丸海藩は幕府に命じられた流罪人の受け入れ準備にかかりきりだった。流罪人は元勘定奉行の船井加賀守守利。井上家を追われた少女ほうは、その罪状から悪霊と恐れられる加賀殿の幽閉屋敷に住み込むことになる。
 不幸な生い立ちの少女が流転のあげくに巻き込まれる毒殺事件と悪霊騒動。時代小説ファンには少々まだるっこしく感じられるかもしれないが、がまんして読み進もう。
 帯に「無垢な少女」とあるせいか、そこらへんだけを集中的に語る感動好きの評が目につく(鼻にもつく)が、ほうは無垢というより無知であろう。まちがってもらっちゃ困る。  天領・金比羅様のおかげで潤う小藩と幕府の駆け引きを背景に、圧倒的厚みを持つ後半の展開はさすが。買って損なし保証。

★★★★☆(2006.1.15 白犬)

新人物往来社 上・下各1800円 4-404-03257-94-404-03258-7

posted by Kuro : 15:37

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