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March 09, 2007

三崎亜記『失われた町』○

 第136回直木賞候補作。同じく直木賞候補作『となり町戦争』でデビューして以来、快進撃を続ける三崎亜記の町シリーズ第2弾。初出「小説すばる」。透明カバーを効果的に使った装幀かわいい。
「町」が意識をもって住民を消し去る。「消滅」には一切の音も振動も、音も光も伴われない。ただ人だけが消滅する。次なる消滅地を確定した管理局は、すべての住民を退去させることに成功した。人が消滅しなかった町はどうなるのか。「町」を見守る者たちにとっては、すべてが未知なる領域だった。30年前に失われた町、月ヶ瀬に集う、消滅に抗おうとする組織と人々を描く。
 デビュー作『となり町戦争』は公共事業として行われる戦争を描いた、ユーモア小説ともとれる作品だが、これはもうSFである。SFファンタジーと言うべきか。考えてみれば、その後に発表した短編集『バスジャック』などの作品群に、同じような作風が見られたのだった。ほんとうは最初からこういうものが書きたかったのではないのかと思うくらいの入れ込みようで、設定、構成ともに凝りに凝っていて息苦しいほどだ。難しいの好きな読者向き。

★★★★(2006.12.29 白犬)

集英社 1600円 4-08-774830-8

posted by Kuro : 23:37

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「失われた町」三崎 亜記集英社2006-11¥ 1,680[勝手に評価:★★★★★(5点満点)]読書期間:3日 [Read more...]

トラックバック時刻: April 24, 2007 02:42 PM

comments

こんにちは。
私はこの作家さん初めてでしたが、当たりでした。
直木賞候補作になったのが分かる気がします。

投稿者 chiro : April 24, 2007 03:57 PM

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