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March 06, 2006
三崎亜記『バスジャック』●○
2005.11.30初版。2005年に「小説すばる」に掲載された7篇からなる短篇集。ほんの3ページのショートショートもあれば、100ページ近い中篇もあり。三崎亜記の見本市、ショーケースといったところ。バラエティにとんでいる。
といっても引き出しは大きく分けるとふたつ。ひとつは奇想天外なアイディアもの(「二階扉をつけてください」「バスジャック」など)でユーモアないしブラックユーモアにあふれている。もうひとつは叙情系とでもいうか――もちろん基本となるところには、なんでそんなことを思いつくんだというようなアイディアがあるのだけれど(「送りの夏」「二人の記憶」)。『となり町戦争』は最初は〈アイディア〉ではじまり、落としどころは〈叙情〉だった。私はどうもまだ彼の〈叙情〉は評価できないでいる。
もしかすると著者の書きたいのはそっちのほうなのかもしれないが、まだ、しんみりさせようじーんと感動させようという意図が見え隠れしてしまうように思う。そうなると途端にさめちゃうんだよね。むしろ驚かせよう笑わせようというのをメインにしているほうが、うまくいくのではないか。まあそこらへんは書いていくうちに上達して言うのかもしれないが。そのふたつのテイストのバランスがいちばんよかったのは「動物園」かな。
★★★(2005.12.18 黒犬)
初出「小説すばる」2005年2月号〜9月号。『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を獲得した三崎亜記の短篇集。
表題作は「今、バスジャックがブームである」という書き出しではじまる。『となり町戦争』と同じく、非日常的なヤバいことが日常になった世界である。すでにある種の「型」まであり、その精度や効果なりを競うというところが、いかにも日本的でおかしい。表題作のほかでは「二階扉をつけてください」と「二人の記憶」が印象に残った。1300円はお買い得。
ちなみに集英社が行った「お気に入り短編投票」では、1位から「バスジャック」「二階扉をつけてください」「動物園」「送りの夏」「しあわせな光」「二人の記憶」「雨降る夜に」の順。「しあわせな光」はわずか3ページの掌篇ながら「二人の記憶」に大差をつけての堂々5位。
★★★★(2006.1.17 白犬)
集英社 1300円 4-08-774786-7
- バスジャックのページ (著者は男性です。念のため)
posted by Kuro : 02:29
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バスジャックposted with amazlet on 06.01.06三崎 亜記 集英社 (2005/11/26)Amazon.co.jp で詳細を見る ... [Read more...]
トラックバック時刻: March 6, 2006 09:17 AM
» 『バスジャック』 異次元のインパクト from 粗製♪濫読
著者:三崎亜記
書名:バスジャック
発行:集英社
笑劇度:★★★★★
『となり町戦争』で第17回小説すばる新人賞を受賞した三崎氏の2作目。
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トラックバック時刻: March 6, 2006 09:47 AM
» 「バスジャック」三崎亜記 from 本を読む女。改訂版
バスジャック発売元: 集英社価格: ¥ 1,365発売日: 2005/11/26posted with Socialtunes at 2006/02/25
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トラックバック時刻: March 7, 2006 01:46 AM
» 『バスジャック』 三崎亜記 from *モナミ*
ミステリーのような、SFファンタジーのような、
短編集。
どれも短いけれども、テイストの異なる、
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全ての作品に... [Read more...]
トラックバック時刻: September 16, 2006 07:10 PM
» 「バスジャック」三崎亜記 from Chiro-address
「バスジャック」
三崎 亜記
集英社
2005-11-26
勝手に評価:★★★★☆
読書期間:2日
あの『となり町戦争』に続く衝撃作!
話題の... [Read more...]
トラックバック時刻: July 18, 2007 11:38 PM
comments
「しあわせな光」が「二人の記憶」に大差をつけたというのは、かなり意外でした。私は「二人の記憶」が一番好きなので。逆に表題作がイマイチわからなくて、最下位に近いです(苦笑)。
「しあわせな光」が「二人の記憶」に大差をつけたというのは、かなり意外でした。私は「二人の記憶」が一番好きなので。逆に表題作がイマイチわからなくて、最下位に近いです(苦笑)。
投稿者 chiro : July 19, 2007 08:50 AM
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