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March 10, 2007

山本甲士『わらの人』○●

 初出「別册文藝春秋」。『どろ』『かび』『とげ』の「巻き込まれ型」三部作が評判になった山本甲士の連作短編集。はじめて入った理髪店で居眠りしているうちに無断でイメチェンさせられちゃった男女の心境の変化を描く。
 前出の三部作と同じく、いわゆる「ふつうの人々」に光を当てている。それぞれに社会的立場や内向的な性格からくるストレスをかかえているのだが、理髪店でイメチェンしたことによって一気に爆発する。上司の不正行為をあばいたり、女の子が暴漢を投げ飛ばしたりして痛快。理髪店を訪ねるまでの“ため”が効いている。
 全6編をつなぐのは女理容師。ミステリアスでもなんでもない、おしゃべりで気さくな女性なのだが、主人公らは丸刈りにされても金髪にされても、気弱だったり急いでいたりするから抗議もできない。ワンパターンストーリーながらおもしろく読んだ。

★★★★(2006.12.28 白犬)


 2006.11.30初版。初出「別册文藝春秋」2005年11月号〜2006年9月号。
 いろいろトラブルを抱えている人が、ふと床屋に入る。しゃべってるうちにうとうとする。うとうとしている間に頭を勝手になんだかすごいことにされてしまう。びっくりするんだけど、自分がそれで了解したのだという気もするから文句もいえない。店をでると、なんだか性格までも変わってしまい、抱えていた問題を解決したりほうりなげたり、とにかく何かしら事態が変わっていく。
 6本すべてがそういうパターン。なので飽きる。髪の毛が金髪になったり坊主になったりパーマかけたりしたぐらいで、そこまで気分や性格がかわるわけなかろうとも思う。でもまあ『とげ』の人だから許せるかな。テンポがよくて。「犬の巻」が好きでした。

★★★(2007.1.15 黒犬)

文藝春秋 1771円 4-16-325480-3


posted by Kuro : 00:45

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