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March 14, 2005

山本甲士『どろ』●○

 2004.12.1初版。単行本は2001年10月中央公論新社刊。
 泉山市役所につとめる岩室は、あるイベントの事務局総務課員。同じ市役所勤めの妻と中学生の息子の三人家族で、新興住宅地に一戸建てを買って暮らしている。職場では困った上司に翻弄され、家族との関係も微妙ではあるがつつがなく暮らしていた。その隣人である手原はペット葬儀社に勤めるうだつの上がらない中年男。妻と娘ふたりの四人家族だが、いずれ妻とは離婚することになっている。ストレスをかかえるふたりの男が、些細なきっかけで反目することになり、それがだんだんとエスカレートしていって……。
 タイトルの「どろ」は“泥仕合”なのか“ドロドロ”なのか。
とげ』よりも3年ほど前に書かれた作品だが、おなじ地方公務員を主人公にしていることで似たような印象を受けるのは否めない。完成度もやはり『とげ』のほうが上か。
 嫌がらせがどんどん過激になっていく様子は滑稽でもあり、戸梶圭太あたりとも共通するものがある。あーあこいつらアホやなあ、と呆れながら楽しむのがよろし。

★★☆(2005.3.2 黒犬)


 市役所職員の岩室とペット葬儀社に勤める手原は隣人同士。きっかけは手原家の敷地からはみ出して伸びる雑草だった。やんわりと刈るよう頼んだ岩室だったが、逆に飼い犬のことで文句を言われる。そんなやりとりがあって間もなく、岩室家に配達されたはずの新聞が二日続けてなくなる。もしかして隣の手原が新聞を抜いているのではないのか――岩室の心に巣くった小さな疑惑は、両家の家族を巻き込む壮絶な闘いに発展して行く。
 いやあ、これはまたすごい。ストレスフルな生活を送る男二人が、その鬱積を隣家への嫌がらせに注ぎ込むという話である。次第に露骨になって行く嫌がらせの応酬。あんたらええかげんにしいや、って誰か言ってお願いだから。お互いに引くに引けない泥仕合、くれぐれもマネをしないで下さい。
『かび』と『とげ』がよかったので読んでみた。発表順に並べると『かび』『どろ』『とげ』。三作とも一般人がブチ切れる話だが、救いがあるという点で『とげ』が一歩リードか。

★★★☆(2005.3.11 白犬)

小学館/小学館文庫 619円 4-09-408030-9

posted by Kuro : 01:51

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