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March 10, 2007

戸梶圭太『誘拐の誤差』○

 初出「小説推理」2005年10月号〜2006年6月号。
 戸梶圭太の作品を読むのは二冊目。一冊目は『自殺自由法』というすごい作品だったが、本作もなんというか、また別の意味ですごい。
 元ヤンキー夫婦の息子、礼乎(れお=10歳)の誘拐・殺害事件の顛末を描く。見返しや扉の劇画チックな挿絵から察せられるように、どうしようもなんない人々のどうしようもない話である。常識とか正義とか職業倫理なんかあってなきがごとし。ひとつひとつのエピソードがリアルで、登場人物の身も蓋もなさには、ときに凄みさえかんじる。しかし状況や展開が悲惨なら悲惨なほど、滑稽なら滑稽なほど、読んでいて優しいきもちになるのはいったいなぜだろうか。こんな「警察小説」もあるんですねえ。

★★★★(2006.12.27 白犬)

双葉社 1800円 4-575-23569-5

posted by Kuro : 14:56

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