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March 04, 2007

町田康『夫婦茶碗』○

 初出「新潮」。親本は1997年同社刊。第11回三島由紀夫賞候補作の「夫婦茶碗」と、「人間の屑」の2編を収録。三島賞の選考委員のひとりで、同作を推した筒井康隆が解説を寄せている。
 どちらも破滅的なダメ男の話だが、女のひとがどちらかを旦那にしなきゃならなかったとしたら、「夫婦茶碗」の男を選ぶかもしれない。ダメなんだけど、雨の日の濡れ子犬を見ているようで心底憎めない。しかし作品としては「人間の屑」のほうが冴えている。北上次郎じゃないけど、おやっと思った。こちらの主人公、元パンクスの〈自分〉のダメは誰もついて行けないようなダメで救いようがない。取り柄があるとすれば愛猫家であることくらいか。温泉旅館の猫の系譜にはほろりとさせられた。この二本立てで400円はお買い得。

★★★★(2007.1.1 白犬)

新潮社/新潮文庫 400円 4-10-131931-6


posted by Kuro : 23:47

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