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May 21, 2006

ハーラン・コーベン『イノセント(上・下)』○●

 メイン州の名門大学で学生生活を謳歌していたマットは、パーティの席で誤って人を殺してしまう。有罪判決を受け、四年間の過酷な刑期を終えて出所したマットは、兄の助力で法律事務所のパラリーガルの仕事に就く。そして九年後、マットの美しい妻オリヴィアが妊娠。二人は生まれてくる赤ちゃんのためにカメラ付き携帯を買う。三日後、マットの新しい携帯に出張中のオリヴィアから画像が送られてきた。モニターに映し出されたのは見知らぬ男とホテルの部屋にいるオリヴィアの姿だった。
 ハーラン・コーベンのノンシリーズ長篇4作目、になるのかな。同社刊の3作目『ノー・セカンドチャンス』に続けて読んだが、残念ながら前作よりはちと落ちる。
 前科者の夫が妻の知られざる過去を追う。揺るぎない愛という不確かなものに頼らなければならないためか、やたらくどくどしい部分が気になる。それでも、別々の場所で起こった事件を少しずつより合わせて行く手法はさすが。次第に浮かび上がってくる全体像に期待はふくらむ。下働きとはいえ法律家のくせに妻の嘘にはぜんぜん気づかなかったのかとか、そもそもどうやって合法的に結婚できたのかだとか、なんで携帯でメール打たないのかなどなど例によってつっ込みどころは多いが、サスペンスだからいいの。春の行楽のおともに。

★★★★(2006.3.16 白犬)


 2006.3.1初版。原著は2005年。RH講談社が頑張って出してくれているコーベンの新作。
 学生時代に人を殺し、服役した過去のあるマット。今では結婚してまっとうに生きているマット。ところがある日、出張中の妻の携帯からあやしげな動画が送られてくる。妻の秘密はいったい何なのか――。
 善良な(前科者ではあるが)市民が、いちばん身近なところにいる妻に裏切られる(裏切られているかもしれない)という恐怖。正統派サスペンス。
 過去のしがらみ(加害者としての、被害者遺族との関わりあいなど)や現在の危機、さまざまな調味料がほどよくブレンドされており、飽きさせない。白犬は『ノー・セカンドチャンス』のほうが評価が高いようだが、わたしはむしろ逆。まあどちらも楽しめることには違いないのですがね。

★★★(2006.3.25 黒犬)

"The Innocent" by Harlan Coben 山本やよい・訳 ランダムハウス講談社(文庫)
 上・下各780円 4-270-10029-X4-270-10030-3

posted by Kuro : 22:53

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前作『ノー・セカンドチャンス』は主人公のキャラがなんとなく納得いかなくて微妙な印象のハーラン・コーベン、二度目の挑戦です。 きっかけは、携帯電話に送られてきた... [Read more...]

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