ハーラン・コーベン(Harlan Coben)

【長篇】
唇を閉ざせ(上・下)
ウイニング・ラン
パーフェクト・ゲーム
ロンリー・ファイター
スーパー・エージェント

【短篇集】

【エッセイ・NF】





唇を閉ざせ(上・下)
Tell No One  4-06-273564-4 4-06-273565-2
佐藤耕士・訳 講談社/講談社文庫 上下各990円

 マイロン・ボライターシリーズで知られるコーベンの単発サスペンス。8年前に連続殺人犯に妻を殺されたNYの若い小児科医ベックのもとに一通のメールが届く。そのメールにはベックと妻しか知るはずのない秘密が隠されていた。妻は生きている――妻の居場所を探し求めるベック。しかし二人の友人が次々に殺され、犯人として追われるはめに。逃亡者となったベックは妻に再会できるのか。そして8年前の悲劇の真相は。
 あらすじだけ見るとすごくありきたりな感じがする。「火サス好きのする作品」といってもいいくらいだ。そっくり日本に置き換えてテレビドラマにしたらおもしろいかもしれない。ふん、ようするに、つまらなかったということだ。訳のせいとも思える。たとえば……

 電車は時間どおりに到着し、時間どおりに出発した。手近な空間を見つけ、くずれるように腰をおろす。頭のなかを空っぽにしようとした。だが無理な話だった。周囲を見渡してみる。車内はかなり空いていた。女子大生が二人、大きなバックパックを担ぎ、「ていうかー」だの「みたいなー」だのといったいいまわしを駆使しておしゃべりに興じている。(下巻 p.236より)

「ていうかー」「みたいなー」は別としても、こういう文章に当たるとわたしは萎える。そうしてつっかりつつ読んでいると、どんなにステキなどんでん返しでも、右から左へスカーっと抜けてしまうわけです。

★★(2002.11.4 白犬)


 2002.10.15初版。300ページ足らずなのに各990円っていうのはいかがなもんでしょう。それはさておき、2001年作品。
 主人公は小児科医ベック。8年前に妻エリザベスを殺され、その後も彼女を忘れられずにいる。そしてある日、ベックのもとに電子メールが届く。そこには妻と彼しか知らないことが書かれていた。いたずらか、それともエリザベスは生きているのか――。
 というお話。《マイロン・ボライター》シリーズの著者による単発ものです。スタンダードなサスペンスに電子メールやウェブカムなどの先端技術(笑)をつけてみました、という印象です。
 話のリズムはよく、主人公はこれでもかというほど窮地に追い込まれ、さらにそんなラッキーなという具合に乗り越えて真相に迫ります。
 訳文に多少の難ありですが、ジェットコースター的に追い立てられて読み進ませるだけのネタではあります。ラストはちょっと足がもつれた感じですがね。
 白犬氏の指摘した部分のほかにも、どうも不自然な箇所が散見されました。大時代な語彙と現代的な文章のミスマッチという感じ。

 彼女は思わず卒倒しそうになった。(下巻 p.124)

 みたいな困った文もあるし。58年生まれの訳者なのでそんなに年寄りというわけではないんだけど……。

★★★(2003.2.27 黒犬)


ウイニング・ラン
Darkest Fear  4-15-170957-6
中津悠・訳 早川書房/ハヤカワ文庫HM 980円


 2002.4.30初版。原著(c)は2000年。スポーツエージェント《マイロン・ボライター》シリーズの第7作目。少女漫画イラストなカバーはやめてほしい。
 例によって例のごとし。今回はマイロンの元恋人が、病気の子供を救ってくれと言ってくるところから始まる。しかもその子供の父親はマイロンその人なのであった。なんか二時間ドラマみたいです。いちおう怪しい一族とか劇場型極悪非道誘拐犯とかが出てきますがね。
 あまり感心しないなあ。カバー表4の“感動のシリーズ最高傑作”というのは言い過ぎだと思いました。

★★★(2002.6.3 黒犬)


パーフェクト・ゲーム
The Final Detail  4-15-170956-8
中津悠・訳 早川書房/ハヤカワ文庫HM 940円


 2001.2.28初版。原著(c)は1999年。スポーツ・エージェント、《マイロン・ボライター》シリーズ第6作。
 今回は――マイロンが南の島から帰ってくると、ニューヨーク・ヤンキーズの投手が殺されていた。それだけならまだいいが(よくないよくない)、容疑者として共同経営者のエスペランザが逮捕されていたからさあ大変。黙して語らない彼女を救うため、マイロンまたまた大活躍。
 といういつものパターン。でも今回は暗い。前作も暗かったような気がする。だんだん暗くなってくるようだ。
 久美沙織の解説、いらん。

★★★☆(2001.4.3 黒犬)


ロンリー・ファイター
Backspin  4-15-170954-1
中津悠・訳 早川書房/ハヤカワ文庫HM 840円


 1999.8.31初版。原著は97年。
 スポーツ・エージェントのマイロン・シリーズ第4弾。やっぱし読んでなかった。先に5作目読んじまったい。
 今回のテーマは、ゴルフ。わたくしも、マイロン同様「わからん」のですが、ま、あくまでモチーフだし、今回はウィンの過去が見えたりして楽しく読めました。
 しかし、邦題は、なあ。

★★★☆(2000.7.8 黒犬)


スーパー・エージェント
One False Move  4-15-170955-X
中津悠・訳 早川書房/ハヤカワ文庫HM 820円


 2000.3.15初版。元NBAプレイヤーでスポーツエージェントのマイロン兄さんシリーズ5作目。4作目読んだかどうだか忘れた。3作目の記憶はあるんじゃがのう。
 で、軽口系ハードボイルド(変?)東海岸バージョン(西海岸はエルヴィス・コールだろうなあ)の今回は、女子プロバスケ期待の星、美人でかしこいブレンダの事件でした。もちろん例によってのスーパー投資家ウィンも活躍、ジェシカとマイロンの仲はどうなる、……と飽きさせずに話は進みます。シリーズものなので、できれば1作目から読んだほうが。

★★★☆(2000.4.3 黒犬)

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last updated : 2003/3/27
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