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January 02, 2007

桂望実『RUN! RUN! RUN!』●

 2006.11.15初版。初出「別册文藝春秋」2005年11月号〜2006年7月号。もうすっかり個人的陸上特集駅伝特集な12月であります。佐藤多佳子の三巻本『一瞬の風になれ』からはじまってね。で、『県庁の星』『レディー、ゴー』の桂望実の新作である。
「県庁」はエリート公務員がダメスーパーに出向してという話、「レディー」は地味めな女がキャバ嬢に転身して成長していくという話。どちらも成長譚だ。もともとがエリートかそうでないかの違い。で今回のは、もともとエリート。
 超高校級ランナーであるところの主人公が、サポート体制のしっかりしている大学に入学する。父親ももと長距離選手で、小さい頃から鍛えられてきた。兄がいるがこっちは医大生。母親は兄に首ったけ。
オリンピックで金メダルをとることが目標で、箱根駅伝ごときは単なる通過点。仲間? チーム? 関係ないね、むしろチーム俺! 周囲からは白い目で見られるが、本人はどこ吹く風。
 まあよくある話ですね。屈折した天才が努力家の友人を得て変化していく、という「一瞬」に少し似た展開です。もちろん様々な障害が出現し、それを乗り越えねばならないわけですが、その障害ってのが荒唐無稽でちょっとなあという感じでしたけど。それくらいしないとダメなのかなあ。もっと普通の(普通のってなんだよ)障害でよかったようにも思うが。
 などといいつつもけっこう評価するなあ。画期的だあ(笑)。主人公岡崎の同輩、岩本がいい味を出している。

★★★★(2006.12.13 黒犬)

文藝春秋 1429円 4-16-325450-1

posted by Kuro : 15:05

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comments

はじめまして。
TBをありがとうございました。
県庁の星以来、桂さんの作品を読んできましたが、
この作品は混乱したというのが正直なところです。

秘密が唐突というか、理解を超えているし、
そこまでして書かなくても良かったんじゃ
ないかと思ったり。
単純にスポーツヒューマンもので
読みたかった気もしています。

投稿者 BEE : January 2, 2007 09:36 PM

BEEさん、こんにちは。コメントありがとうございます。
いやほんと、あの「秘密」には驚いたというか呆れたというか(笑)。なんらかの斬新さを出したかった、のだろうとは思いますが、やっぱり無理がありますよね。それこそ、パパが子供の頃から勝手にドーピングしてたとか、その程度のことでよかったような気もします。この著者のチャレンジ精神は買うのですが、今回はそれがちょっと裏目に出たかなと。岩ちゃんがよかったので余計に惜しいように思いました。
今後ともどうぞよろしくおねがいします。

投稿者 黒犬 : January 3, 2007 02:41 PM

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