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January 03, 2007
三浦しをん『風が強く吹いている』●
2006.9.20初版、12.5第7刷。書き下ろし1200枚長篇駅伝小説。
寛政大学の学生が住むボロアパート「竹青荘」。とあることからそこに住むことになった新入生・蔵原走(かける)(それにしてもこのベタなネーミングはいかがなものか)は、アパートのリーダーともいうべき四年生・清瀬の陰謀で、箱根駅伝をめざすことになる。出走者は十人。全員竹青荘の住人。ひとりの補欠もなく、陸上経験者もわずかしかいないにもかかわらず、彼らは少しずつ前進をはじめる──。
これまた天才ランナーと凡人その他大勢とのせめぎあい成長譚。ただ『RUN! RUN! RUN!』に比べると圧倒的に迫力があるのは、地に足のついた描写のせいなのだろうなあ。もちろん現実味はこっちだって負けず劣らず、ない。
なにしろ素人ばっかりなのだ。まがりなりにも「駅伝チーム」があって、優秀な選手を集めたりトレーニングを積んでいたりというわけではない。陸上経験者は三人、アフリカからの留学生がひとりいるが都会生活をしていた男だし、あとはサッカーがふたり、剣道がひとり。あとは在学中に司法試験に受かった男とマンガオタクとクイズオタク。そんな寄せ集めが、わずか半年かそこらの訓練で予選会を突破して箱根を走るなんて、普通に考えたらあり得ない。
にもかかわらず、ありそうな気がしてしまう。違和感がだんだん薄れていく。それが筆力ってやつなんでしょうね。1200枚を、そうとは感じさせない。まいったまいった。
★★★★☆(2006.12.16 黒犬)
新潮社 1800円 4-10-454104-4
- 第83回箱根駅伝@日本テレビ
posted by Kuro : 15:06
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風が強く吹いている三浦 しをん 新潮社 2006-09-21
「箱根の山は蜃気楼ではない。襷をつないで上っていける、俺たちなら。」
才能に恵まれ、走ること... [Read more...]
トラックバック時刻: January 3, 2007 07:48 PM
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装画・挿画は山口晃。装幀は新潮社装幀室。
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トラックバック時刻: January 4, 2007 01:10 AM
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風が強く吹いている
三浦しをん著/新潮社
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感謝という... [Read more...]
トラックバック時刻: January 4, 2007 03:05 PM
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風が強く吹いている
三浦 しをん
寛政大学4年の清瀬灰二は肌寒い三月、すばらしい「走り」で万引きしたお店から逃げていく蔵原走に出くわし、自転車で追い... [Read more...]
トラックバック時刻: January 4, 2007 11:28 PM
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トラックバック時刻: January 5, 2007 09:18 PM
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トラックバック時刻: March 12, 2007 08:29 PM
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風が強く吹いている
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ISBN-10: 4104541044
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随分と待って、やっと図書... [Read more...]
トラックバック時刻: June 13, 2007 12:24 AM
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三浦しをん:著 『風が強く吹いている』
風が強く吹いている新潮社このアイテムの詳細を見る
こないだ読んだのはエッセイだったので、
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トラックバック時刻: July 16, 2007 12:56 PM
» 三浦しをん『風が強く吹いている』 from itchy1976の日記
風が強く吹いている (新潮文庫 み 34-8)三浦 しをん新潮社このアイテムの詳細を見る
今回は、三浦しをん『風が強く吹いている』を紹介します。箱根駅伝挑戦の... [Read more...]
トラックバック時刻: December 29, 2010 05:39 PM
comments
こんにちは。
TBをありがとうございました。
この作品こそが直木賞受賞作で良かったんじゃないかと
思うくらい素晴らしい作品でした。
確かに現実的にあり得ない設定の
オンパレードでしたが(笑)
それを忘れるくらいの生き生きとした登場人物たち。
読み終えてしまうのが惜しい作品は
なかなか出会えませんが、この作品は
まさにそれでした。
おかげで今年の箱根駅伝が楽しめたこと!
こんにちは。
TBをありがとうございました。
この作品こそが直木賞受賞作で良かったんじゃないかと
思うくらい素晴らしい作品でした。
確かに現実的にあり得ない設定の
オンパレードでしたが(笑)
それを忘れるくらいの生き生きとした登場人物たち。
読み終えてしまうのが惜しい作品は
なかなか出会えませんが、この作品は
まさにそれでした。
おかげで今年の箱根駅伝が楽しめたこと!
投稿者 BEE : January 4, 2007 03:01 PM
BEEさま、コメントありがとうございます。
駅伝というか長距離走って、観戦するとなるとある程度の時間、腰をすえて付きあってやろうじゃないか、というふうになりますよね。1時間2時間、駅伝にいたっては足かけ2日、付きあうことになってしまう。普通に考えればただ走っているのをみているだけなんて退屈きわまりないんですが(実際、わたしも子供の頃は、マラソンだのなんだのの、なにが面白いのか、まったく理解できませんでした)、こういう小説を読んでしまうと、そのランナーの背景を、なんとなく想像してしまい――ほんのかすかに、ごくおぼろげに、なんですが――なんとも不思議な気がしました。
1号車だろうが2号車だろうがどこの中継ポイントであろうが、抜かれそうな選手には「迫ってるぞ、抜かれるな」と思い、追いつこうとしている選手には「もう少しだ、がんばれ一気に抜いてしまえ」と思ったり。こんな楽しみかたもあったのだなあと、新鮮な思いでした。
投稿者 黒犬 : January 11, 2007 01:42 AM
こんばんは。
TBどうもありがとうございました。
ほんと、普通に考えたらあり得ないのに、
ありそうな気がしてきちゃいますよね。
読者もまたハイジに引っ張られていたのかもしれません^^
投稿者 miyukichi : July 16, 2007 09:54 PM
コメントをどうぞ。