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October 23, 2006

宮部みゆき『名もなき毒』○

 北海道新聞、東京新聞、西日本新聞、河北新報、中國新聞に2005年3月から2006年8月にわたって連載されたものに加筆修正。宮部みゆき3年ぶりの現代ミステリー。『誰か』の続編。シリーズものだったんですね。すいません『誰か』未読です。
 主人公は日本有数の財閥、今多コンツェルンの会長の娘婿である杉村三郎。同グループ企業広報紙の編集部に所属しているが、とうぜんながら部員らの婿殿への風当たりは強い。物語はそんな編集部内でのトラブルに始まる。
 ろくに仕事もできないくせに問題ばかり起こすアルバイト部員の原田いずみ。ある日とうとう解雇が決まるが、彼女は納得せず、そればかりか編集部や会社に対して脅迫めいた行動を起こす。会長直々に事態の収拾を命じられた杉村は、以前いずみの身上調査をしたことがあるという私立探偵のもとを訪ね、ちょうど居合わせた女子高生、古屋美知香と知り合う。美知香の祖父は首都圏で続発する毒物混入事件の四人目の被害者だった。
 ストーカーまがいの度し難いばか女問題と連続無差別毒殺事件の二本立て。
 弱っちいうえにお人好しの杉村にはいらいらさせられるが、そこが著者のめざすところなのだろう。週刊文春のインタビューで、「シリーズを始めるときに頭にあったのが、マイケル・Z・リューインのアルバート・サムスン物でした」とキッパリ語っておられる。や、特命係長只野仁みたいなスーパーマンがいいってわけじゃなくて。ハハハ。主人公を平凡な男にしたことで、かえって物語のテーマが際だつのかもしれない。480ページを一気に読ませる力はさすが。1800円はお買い得。

★★★★(2006.9.20 白犬)

幻冬舎 1800円 4-344-01214-3

posted by Kuro : 01:46

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