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October 29, 2006
松尾スズキ『クワイエットルームにようこそ』○
初出「文學界」2005年7月号。第134回芥川賞候補作。劇団「大人計画」の主宰者にして俳優、演出家、脚本家、さらにコラムニスト、小説家としても活躍する松尾スズキの長篇小説。
フリーライターの明日香は同居人の鉄ちゃんと喧嘩して、やけ酒のつまみがわりに向精神薬をポリポリかじって意識を失い、精神病院の一室に拘束される。軽い鬱で通院歴があるといっても死ぬ気などなかった明日香は、頼みの綱の鉄ちゃんに退院の承諾をもとめるがかなわず、医療保護入院患者としての生活を送ることになる。
イケズなナースや、それぞれにめんどくさい患者仲間と交流しつつ、自分という現実を取り戻そうとあがく明日香。そこに同居人鉄ちゃんの、なんとも落ち着かない優しさがからむ。終盤の「わたし」の章では思わずほろりとさせられた。冒頭のゲロ夢シーンは、あんがい著者の照れ隠しかもしれない。
さいきんこの手の作品が多いせいか、とくに意識してなくても薬の名前を覚えちゃうくらいなんだけども、こうしてめずらしくもなくなったころにあえて評価されるのは、作品の力にほかならない。ひじょうにおもしろく読んだ。
★★★★☆(2006.9.26 白犬)
文藝春秋 1048円 4-16-324520-0
posted by Kuro : 22:23
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トラックバック時刻: November 2, 2006 12:06 AM
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