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October 01, 2006

浅田次郎『あやし うらめし あな かなし』○

 7篇からなる浅田次郎の奇譚集。初出「小説推理」。
 第一話「赤い絆」と最終話「お狐様の話」は、夏休みなどに父母の里に集まった子供たちの枕元で出戻りの伯母さんが語る寝物語。その話をふとんのなかで聞いていた男の子の後の回想として書かれている。里の家は旅宿の看板を掲げてはいるが、伯母が「おじいちゃん」と呼ぶ曾祖父は山上の神社の神官であり、宿は本来、講中の信徒を泊める宿坊であった。そして子らはその宿坊の、ある痛ましい事件のために長い間封印されていた「五番の部屋」に寝かされているという、おとなでもトイレに行くのに勇気がいるようなシチュエーションだが、帯に「優霊物語」とあるように、本作に登場する幽霊は、恨みつらみを晴らすために出てくるような悪霊ではない。哀しみや憂いをたたえて此岸と彼岸をさまよう妖しきものどもである。
 伯母さんの寝物語のほかでは、都心の古い病院に勤務するナースの体験を綴った「昔の男」と、六本木のある場所で異空間が交差する「遠別離」が印象に残った。

★★★★★(2006.8.1 白犬)

双葉社 1500円 4-575-23553-9

posted by Kuro : 23:43

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