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September 30, 2006

北村薫『ひとがた流し』○●

 初出「朝日新聞」2005年8月20日〜2006年3月23日。新聞小説の単行本化ですね。
 アナウンサーの千波、作家の牧子、元編集者で写真家の妻となった美々は高校時代からの付き合い。四十代になった三人は恵まれた生活環境を手に入れ、それぞれ充実した日々を暮らしている。ある日、千波は四月から朝のニュースのメインキャスターをつとめるよう上司に告げられる。開局初の女性キャスターである。男社会のなかで幾度となく涙をのんできた彼女にとって大きな意味を持つ決定だった。意気揚々と抱負を語る千波。だが、牧子に付き合って入った人間ドックで、千波は死に至る病を宣告される。
 物語は千波、牧子、美々の三人と、周囲の人々の視点によって多面的に構成される。これからというときに、なにもかも諦めなければならくなった千波。なんともやり切れない話だが、牧子と美々の二人が自分の役目を察し、せいいっぱい尽くそうとする姿には清々しささえ感じる。長年の友の思いは深い。恋人や結婚相手の都合でたちまち疎遠になってしまうと言われ続けてきた女同士の付き合いも、新たなステージを迎えた、そんな気がする。多くの読者を涙させた北村薫の長篇。今夏、おすすめの一冊。

★★★★☆(2006.8.2 白犬)


 2006.7.30初版。初出「朝日新聞」2005.8.20〜2006.3.23。連載されてたのは知っていたが全然読んでませんでした。で、本になったので読んでみたのでした。
 北村薫だしミステリーなのだろうと勝手に思っていましたが(最近の作品はあまり読んでなかったけど)、とくにそんなこともなく高校時代からの友人である女三人組のそれぞれにさまざまな試練や葛藤をかかえた四十代を綴った物語。
 ずっと独身、結婚したけど離婚、離婚したけど再婚の三人はそのまま現代女性のモデルパターンをあらわしているのかもしれない(まあ現実には結婚してそのまま継続というのが一番多いのだろうけれど)。恋愛問題、家庭問題などこまごました(当人たちにとっては重要であろうとも)事件がつづく退屈な日常の物語かと思いきや、話は暗いほうに進む。ドラマチックといえばドラマチックだが、かなしい話だ。
 だからといって、結婚しないと悲惨よね、老後をひとりで迎えるなんて、やっぱり子供がいないと、などという小市民的思考停止馬鹿結論しか出せないような馬鹿には読んでもらいたくない一冊。

★★★★(2006.8.13 黒犬)

朝日新聞社 1600円 4-02-250199-5

posted by Kuro : 22:47

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