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September 28, 2006

米澤穂信『ボトルネック』●

 2006.8.30初版。書き下ろし青春ミステリ。
 ミステリ? ミステリなのか? どっちかというとSF? ファンタジー?
 高校生リョウは、二年前に恋人ノゾミが死んだ場所を訪れる。そこで一瞬めまいを起こし、気がつくと金沢にいた。自宅に戻るとそこには見知らぬ少女がいる。サキと名乗るその少女はその家の長女だという。どうやらリョウは、死んだはずの姉が生きており、リョウ自身は生まれなかった世界に来てしまったらしい。
 という平行宇宙もの。しかしパラレルワールドから戻れるのかとか自分の世界では恋人だった少女を助けられるのかとか、そういう正しいお話ではない。そんなふうに話は展開しない。しそうに思えるがしない。考えられないような異常事態なのにサキもリョウも冷静で、妙にのんびりしている。少しずつずれているパラレルワールド内の《間違い探し》もユーモラスだ。四章仕立て(その前後に短い序章と終章がつくが)の三章までは、突拍子もない設定の、まあまあ面白いだけの(“だけの”といっちゃあ失礼だが)小説。それが四章に入ったとたんに(その予兆はあるにしても)空気ががらりと変わる。
 最後まで読まないと、この小説はわからないだろう(最後まで読んだからといってわかるわけでもないけどね)。
 すっきり爽やかコカコーラのような小説を読みたい人には向いていない。読み手を選ぶ小説のような気がする。選ばれたかどうかは読み終わるまでわからないのが難点だが……。

★★★★(2006.9.24 黒犬)

新潮社 1400円 4-10-301471-7

posted by Kuro : 02:36

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