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September 25, 2006

夏樹静子『心療内科を訪ねて 心が痛み、心が治す』●○

 2006.8.1初版。単行本は03年8月刊。ミステリ作家であるところの著者が、心療内科にかかった患者たちとその主治医にしたインタビューをまとめたルポルタージュ。
 そもそも著者自身が腰痛に苦しみ、整形外科などをたず、民間療法まで試してみるが一向によくならず、希望をうしなった経験をもつ。その後、心身症であるという診断をうけ――すなわち「腰痛は心因性のものである」と宣告され――治療をつづけることにより回復したのだった。
 肉体にあらわれている症状の原因が、心にある。納得できるようでもありできないようでもあるが、負傷や病原菌などのわかりやすい原因に比べれば断然「わかりにくい」。しかしながら実際にはそういう事態におちいっている患者は多く、あちこちで心療内科の看板が掲げられ、最近ではさほど特殊であるという印象も受けなくなってきた(ような気がする)。
 本書で紹介されている症例は、腰痛、耳痛、シャックリ様痙攣、潰瘍性大腸炎、醜形障害、顎関節症、高血圧、拒食、過食、肛門痛、毛髪抜毛症、円形脱毛症、過敏性腸症候群、斜頸、眼瞼下垂、喘息。耳慣れないものもあれば、よく聞く病気もある。それらがみな心因性だった(ここでインタビューされている患者の場合は)ということに驚かされるが、ストレスにあふれる現代社会であれば頷けるような気がする。さきほどから「気がする」ばっかりなのは、とりあえず今現在わたし自身にそれらしき症状がないからだが、いつ自分にふりかかってくるかわからないのがおそろしい。そのときにあわてないための、事前学習・予備学習としても価値があるだろう。今さまざまな症状におそわれて思い悩んでいる人々にとっての福音になるであろうことは言うまでもない。

★★★☆(2006.9.14 黒犬)


 ミステリ作家の夏樹静子が心療内科を取材したルポルタージュ。
 取り上げられている症例は、腰痛、耳痛・シャックリ様痙攣、潰瘍性大腸炎、醜形障害・顎関節症、高血圧、拒食・過食、肛門痛、毛髪抜毛症、円形脱毛症、過敏性腸症候群、斜顎、眼瞼下垂、喘息。著者自身、3年間もの間ひどい腰痛に苦しんだというだけあって、どの症例も当事者が心療内科を訪れるまでの経緯が丁寧に描かれている。あとがきの「心療内科は終着駅ではなく始発駅だ」という言葉に深くうなづいてしまいました。あすはわが身。

★★★☆(2006.10.29 白犬)

新潮社/新潮文庫 400円 4-10-144313-0

posted by Kuro : 01:06

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