« 歌野晶午『女王様と私』● | Blog Top | 久坂部羊『無痛』○ »

September 22, 2006

大崎善生『優しい子よ』●○

 2006.6.30初版。「小説現代」に掲載された4篇からなる短篇集。といっても、私小説というか、たぶんかなり事実に即しているのだろうから、それぞれつながっている。最初の「優しい子よ」と最後の「誕生」、二番目の「テレビの虚空」と三番目の「故郷」は、それぞれペアのようになっている。
 最近の大崎善生の本はあまりちゃんと読んでおらず(だってなんだかいつもヨーロッパとかあるいは素敵な避暑地あたりを舞台にした恋愛小説みたいな印象があってね)、久しぶり。本屋で手にとって、最初の数ページを読み、あ、こりゃヤバい、このまま読み進めるとヤバい、と直感して購入したのでした。本屋を出るやいなや喫茶店にとびこみ読み始め、1時間ほどで読了(200ページほどの短い本だしね)。途中なんどかヤバかったことを告白します。
 ずるい。いかにもずるい。なんともずるい。子供と動物を出すのはずるいと、よく言われることですが、でもまあ事実ならしょうがないよね。大崎夫人と茂樹少年の交流は、なんともせつなく美しい。
 しかししかし、長めの「あとがき」にいきなり目立つ誤植(「メール」の「ー」が横組み用の音引きになっている――つまり、縦棒であるはずのものが横棒になっている。p.199)にはびっくり。ぱっとみて気がつきそうなもんだけどなあ。

★★★★(2006.7.18 黒犬)


 初出「小説現代」。棋士の人生を描いたノンフィクション『聖の青春』『将棋の子』で華々しくデビュー、その後『パイロットフィッシュ』『アジアンタムブルー』などの小説作品でも成功した大崎善生の作品集。大崎氏は2001年に日本将棋連盟を退職。2003年に19歳年下の女流棋士(美人)と結婚。表題作ほか4篇からなる本作は、その奥さんと、難病で入院中の男の子との交流が軸になっている。ノンフィクションか小説かという問題については「あとがき」でくわしく述べられているので省くが、史実や重大事件でもないのだから、たとえ大部分が創作だとしても文句を言う人はいないだろう。両方の手法が生かされたいい作品だと思います。

★★★★(2006.8.9 白犬)

講談社 1300円 4-06-213492-6

posted by Kuro : 21:22

trackbacks

このエントリーのトラックバックURL:
http://dakendo.s26.xrea.com/blog/mt-tb.cgi/250

このリストは、次のエントリーを参照しています: 大崎善生『優しい子よ』●○:

» 『優しい子よ』 大崎 善生 講談社 from みかんのReading Diary♪
優しい子よ 大崎さんの運命的な出会い4編…といった感じでしょうか。 人前で読まないほうがいいと思います〜(^^ゞ 「優しい子よ」 大崎さんの... [Read more...]

トラックバック時刻: September 23, 2006 03:40 PM

comments

コメントをどうぞ。




保存しますか?