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December 18, 2005

重松清『その日のまえに』○●

 初出「別册文藝春秋」2004年3月号〜2005年7月号。神様は意地悪だから大切なひとを遠くへ連れ去ってしまう――生と死と、幸せの意味を見つめる連作短篇集。
 話題の本。泣けますとか号泣しましただとか人様が言っていると、ふん、ぜったい泣くものかとひねくれてしまうが、本書は泣ける。親子、夫婦、旧友と、やがて死をむかえる人と周囲の人々との関係はさまざまだが、丁寧につむがれたエピソードのひとつひとつが身につまされる。通勤本にはおすすめしない。
 表題作「その日のまえに」に続く「その日」「その日のあとに」の3篇のほかでは、肺癌におかされた母と高校一年生の息子の生活を描く「ヒア・カムズ・ザ・サン」が印象に残った。

★★★★☆(2005.9.3 白犬)


 初版。7篇を収録した連作短篇集。最初の4篇は独立しているが、最後の3篇は上・中・下といった感じになっている。
 テーマは「死」である。小学校の同級生、夫、小学校の同級生、母親、妻。小学校の同級生というのは重松清の得意とするところだから2回出てきます。リアルタイムの話と過去の話とが。
「死」がテーマなんですから、そりゃもう暗いです。身近な人を亡くした経験のある人ならば、その記憶を呼び起こしてたまらなくなることもあるでしょう。誰もがひとしく死んでいき、誰もが人の死に立ち会う可能性がある。逃れようがないテーマであるし、またこれがうまいときている。
 うまい。しかしあざとい。コノヤローとも思う。でもくやしいけどやっぱり、うまい。
 というような感想を書いてしばらくほっといたのだが、ずいぶんと売れているようだ。まあそうだろうな。あまり売れてしまうとついつい否定的に考えてしまうのが常だが、でもまあこの本に関しては、売れていいかな、と思う。とってつけたような難病と死を調味料にした、純愛・涙ボロボロもの(笑)がベストセラーになるよりは、こういうまともな小説が売れてくれたほうが健康的だ。
 子供たちに命の尊さをどう教えるか、なんてことに親や教師がやっきになっている昨今、百万言費やすよりも、この小説1冊のほうがまっすぐに伝わるような気もするし。そもそも本を読まないかもしれないが、そんなことは知ったこっちゃない。

★★★★(2005.9.28 黒犬)

文藝春秋 1429円 4-16-324210-4

posted by Kuro : 23:45

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トラックバック時刻: December 20, 2005 05:00 AM

comments

こんにちは。
突然失礼します。
東京都板橋区に本拠地を置く劇団銅鑼と申します。
重松清原作「流星ワゴン」舞台化のご案内です。
あの映画監督・行定勲氏も先日池袋公演をご覧になり、絶賛しました!!
2月3日〜2月5日相鉄本多劇場(横浜)・2月9日兵庫県立芸術文化センター中ホール(西宮)で上演します。
公演の詳細は劇団銅鑼HP
http://www.gekidandora.com
をご覧下さい。
昨年東京で初演、高い評価を受け、口コミでSOULD OUTを出せた作品です。
お近くでしたら、是非ご覧下さいませ。
よろしくお願いいたします。

劇団銅鑼 制作 田辺素子
〒174-0064 東京都板橋区中台1−1−4
TEL:03−3937−1101
FAX:03−3937−1103
URL http://www.gekidanora.com
e-mail gekidandora@pop12.odn.ne.jp


投稿者 劇団銅鑼 : February 3, 2006 08:18 PM

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