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July 14, 2005

金城一紀『SPEED』●

 2005.7.1初版。書き下ろし。『レヴォリューションNo.3』『フライ、ダディ、フライ』(どっちも角川から新装版が出てるんですねえ。講談社と喧嘩しちゃったんだろうか。それとも映画化のためか)につづくThe Zombiesシリーズ最新作。
 今回の主人公は真面目でごく平凡な女子高生。親しくしていた家庭教師の女子大生が謎の死を遂げたことから、その平凡な生活が一変する。
 やっぱりオヤジより女子高生だよなあ、なんて。世間知らずで頑固、そのくせ度胸がすわってるあたりは、なかなか〈普通の女子高生〉とはいえないと思うが(ちなみに学校は例のあの女子高だ)。舜臣らとの距離のおきかたも好ましい。そういう人間が、金城作品の魅力なわけだが。それに比べて、今回の敵役やその陰謀がちょっとリアリティに欠ける。いや、現実にありえようがありえなかろうがどうでもいい。それを感じさせてくれればいいのだ。
 パターンとしては『フライ、ダディ、フライ』と似ている。というより、『レヴォリューションNo.3』で彼ら内部の事件はやり尽くしてしまったので(やりようによってはまだできそうだけど)、必然的に外部の人間との接触から物語を構築せざるをえない。それはそれで、動機や事件、キャラクターに魅力があれば面白くなるのだろうけれど、いずれマンネリ化してしまうのは『IWGP』シリーズ(石田衣良)を見ても予想がつくところ。The Zombiesだけでなく、いろいろな小説を書いてほしいと思う。
 無論、ひさしぶりに朴舜臣や南方、山下らと再会できたのはうれしい。もう少し頻繁に本を出してくれるといいのだけれど。

★★★★(2005.7.14 黒犬)

角川書店 1100円 4-04-873626-4

posted by Kuro : 23:47

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comments

TBありがとうございます。
シリーズ物だけではなく他の物も書いて欲しいというのは
同感ですね。
次回作はもう少し早く出してもらいたいものです。

投稿者 Takeman : July 15, 2005 04:05 PM

はじめまして。TBありがとうございます。
久しぶりに『対話篇』を読み返したのですが、
ああいう作風のものももっと読んでみたいですね。

投稿者 schneebly : July 16, 2005 12:42 AM

Takemanさま
schneeblyさま

コメントありがとうございました。
金城一紀は、なにしろまだ若いのだし、ほかにも引き出しはありそうなので、あまりゾンビーズだけに固まりすぎず、いろいろチャレンジしてほしいですねえ。

今後ともどうぞよろしくお願いします。

投稿者 黒犬 : July 16, 2005 05:28 PM

こんばんは、はじめまして。TBありがとうございました。
こちらからもさせていただこうと思ったのですが、エラーになってしまいできませんでした。なにゆえ……?
ゾンビーズはこれからもシリーズで書き続けるとしたら、似たようなものになりそうですよね。
彼らがはじけている姿を見るのは大好きなのですが、読者としては微妙なところです。

投稿者 マリ : July 16, 2005 08:28 PM

あれ、TBできなかったと思ったのにできてました。
失礼致しました!

投稿者 マリ : July 16, 2005 08:29 PM

マリさま。

ようこそいらっしゃいました。
なんか別の話のなかに、ゾンビーズのなかの誰かがちらっと顔を出す、みたいな話を読んでみたいです。
五年後十年後に、どこかの会社で、なにをやってもダメな山下っていう社員がいたりとか(笑)。

投稿者 黒犬 : July 17, 2005 01:19 PM

TBありがとうございました。
ゾンビーズって「グループ」であることに執着しないところがいいですよね。
次は「対話篇」を読んでみようかと思います。

投稿者 yana : August 8, 2005 08:53 AM

yanaさま。

コメントありがとうございます。
「対話篇」もお読みになったのですね。「花」、いいですよね……。
って、ブログを拝見してはじめて「谷村教授」が出ていたことを知りました。ありがとうございました。下手したら一生気づかないところだった。あちこちつながってるなあ。

コメントが遅れてすみません。本当はそちらのエントリーにコメントすべきなのでしょうが、遅くなってしまったのでこちらで失礼します。
今後ともどうぞよろしく。

投稿者 黒犬 : September 12, 2005 11:21 PM

コメントをどうぞ。




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