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February 02, 2005

白岩玄『野ブタ。をプロデュース』●○

 2004.11.30初版。初出「文藝」2004年冬号。第41回文藝賞受賞作。著者は1983年京都市生まれの21歳。若い。 
 クラスの人気者の俺は、転校生であるどうしようもなくさえない男、野ブタをアイドルに仕立て上げることにした。プロデューサーとして辣腕を発揮する「俺」だが、思わぬ事態に目論見は二転三転。
 おちゃらけ青春小説、のように見せかけているが、けっこうキツい内容。救いのない閉塞感がたまらない。
 痛い。辛い。
 やたらと出てくる「(笑)」も痛さを増幅させる(笑)。
 最近の高校生は大変なのである。馬鹿に見えるけど。いや、おそらくほとんどが馬鹿なんだろうけれど。

★★★(2005.1.3 黒犬)


 第41回文藝賞受賞作にして第132回芥川賞候補作。2005年2月22日の朝日新聞広告に「13万部突破!」と出ている。すごい。『王様のブランチ』などテレビでも取り上げられているもよう。やはり学園ものは強い。
 高校2年生の〈俺〉こと桐谷修二が、転校生を人気者にすべく、身なりから一挙手一投足までをプロデュースするという話。そこまでしてやんなきゃならない転校生がどんなやつだったかというと……

気持ち悪いほどオドオドしたデブだった。ベッタリとしたワカメヘアーを載っけたデカ過ぎる頭、その額にはじんわりと脂が浮かび、デザイン性ゼロ機能重視の大きなメガネを顔面にめり込ませ、サイズちょっと小さいんじゃないですかのムチムチブレザーにズボン、顔は……これはもう残念な顔にお生まれになったとしか言いようのない絵に描いたようなブ男だった。(p.41)

 もうね、女子高生の世界では「うわ〜キモイキモイキモイ! 私ああいうの絶対無理。ホント無理」(p.45)なわけです。 だが、このいじめ地獄転落確実の転校生と行きがかり上、関わることになった〈俺〉にはプロデュース能力があった。なぜなら、すでに自分自身をプロデュースしているから。

 「饒舌な文章に勢いはあるけれど幼い」「当節流行の漫画の手法に似ていて軽すぎる」「冗漫で長すぎ」などなど突き放したような選評が並ぶが、同候補作の中では『漢方小説』(中島たい子著)よりはるかに面白く読んだ。高校生活を乗り切るために“いいヤツ”をやっている主人公の内面を、独白というか軽口で見事に描ききっている。せりふや文末の(笑)も、読み進むにつれさほど気にならなくなる。たしかに後半ダレるが、そうでなければならなかったとも思える。次作期待。

★★★★(2005.2.22 白犬)

河出書房新社 1000円 4-309-01683-9

posted by Kuro : 00:34

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comments

はじめまして!いまさらですが昨日この本を読みました。

>たしかに後半ダレるが、そうでなければならなかったとも思える。

そう言われてみると・・・って感じで今まで自分の持っていなかった視点から本を見直すことができました。
つたない感想ですが、書いたのでトラバさせていただきます☆彡

投稿者 きっちん : May 6, 2005 06:51 PM

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