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February 02, 2005

山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』○●

 筆名の由来は「コーラが好きだから」。ナオコーラの前は「ロック」だったんだって。山崎ロック。このエピソードだけでも読んでみるかという気になるよ。そのうえこの印象深いタイトル。第41回文藝賞受賞作。
 モデルになって欲しいの――美術専門学校生の「オレ」は、講師のユリに頼まれて二子玉川にある彼女のアトリエに通うことになる。そのうち二人は20歳の年の差を超えてベッドを共にする仲になるが、ユリはれっきとした既婚者。だが当の本人はさほど気にしていない様子。それどころか、自宅に招かれて「想像よりずっとぶ男だった」ダンナと3人で食卓を囲むはめに。微妙なバランスを保ちつつオレとユリは関係を続けるが、やがてユリが創作活動に悩むようになり講師を辞めてしまう。
 主人公の「オレ」は至極まっとうな19歳の男。39歳のユリはそのダンナとともにいっぷう変わっている。結果的にオレはこのギャップにふりまわされることになるのだが、恋する男女のありがちな言動がすばらしく可笑しい。この作家にはコメディーの才能があると思われる。
 後半、すべてに行き詰まったユリは長い旅に出るが、行き先が「ミャンマー」というのには腹を抱えて笑ってしまった。その旅を機に、ユリと会えない日々を過ごすオレの独白がなんとも切ない。読者はそこで本書のタイトルの意味するところを知ることになる。
 選考委員に絶賛されただけのことはある。次作おおいに期待。

★★★★☆(2004.12.14 白犬)


 2004.11.30初版。初出「文藝」2004年冬号。第41回文藝賞受賞作。第132回芥川賞候補作。著者は1978年北九州市生まれ。
 19歳の美術専門学校生のオレと39歳の美術専門学校講師のユリ。20歳の年の差は障碍になるのかならないのか。
 年の差カップル(しかも不倫)がどうなるか、という観点からすればごくありきたりの恋愛小説。最近は若い男と中年(かそれにさしかかった女)の組み合わせが流行っているのか。
 女のほうが天然系というかフシギ系というか、つかみどころのない変わり者というのが新しいのかな。いろんなことが、アリになっているってことでしょう。
 でもそんなに、感動するってほどじゃなかったな。タイトルほどのインパクトはない。芥川賞の候補っていうのも、なんだか微妙(もっとも今さら阿部和重ってのもどうかと思うが)(※ちなみに芥川賞は阿部和重が受賞しました。)。
 読み手に対する刃物の鋭さは、「野ブタ。」のほうに軍配が上がったように思えるのだが、どうか。

★★★(2005.1.3 黒犬)

河出書房新社 1000円 4-309-01684-7

山崎ナオコーラ-書評wiki

posted by Kuro : 00:47

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