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August 25, 2007

角田光代『ロック母』○●

 初出「群像」「星星峡」など。92年の芥川賞候補作「ゆうべの神様」から第32回川端康成文学賞受賞作である「ロック母」まで、角田光代の15年間にわたる代表的短編小説7編を収録。こういう作品集もおもしろい。んが。「緑の鼠の糞」というタイトルの作品の次に収録されている「爆竹夜」の書き出しが「胸糞悪かった」ですよ。糞糞ってあーた、むかしはけっこうトンガってたのね。
 初の芥川賞候補作「ゆうべの神様」について、著者本人があとがきでこう述べている。

 今まで雑誌で書いたものは、みな本になっているが、この「ゆうべの神様」だけはどの本にも収録されていない。その理由としては「本にするに値しない」というような認識が、当時の編集者にも私にも、あったからだ。(中略)しかし今思えば、だれかわからないが、よくこの小説を賞の候補にしてくれたものだと思う。知らない人からの電話であらすじを聞き、「すごいつまんない小説みたい」と私は思ったのだが、実際、たいへんに拙い小説だと思う。(「あとがき」p.258-259より)

 すさんだ両親のもとで暮らす女子高校生の心象を追った作品なのだが、いやいやいや、たいしたものですよ。文学賞なんてタイミングなのだなとつくづく思う。ちなみに同作が候補となった第108回芥川賞候補作では、多和田葉子の『犬婿入り』が受賞している。

★★★★(2007.7.14 白犬)


 2007.6.15初版。初出いろいろ。92年から2006年に書かれた角田光代の短篇集。
 親子関係にスポットライトを当てた3篇(「ゆうべの神様」「ロック母」「父のボール」)が印象に残った。あとは外国ものが3つ(「緑の鼠の糞」「爆竹夜」「イリの結婚式」)とホラーじみたものが1つ(「カノジョ」)。どれも角田光代っぽい(ってどんなんだ)。
 ただひとつ気に入らないのは、初出を各作品の扉ページに入れていること。巻末にページがとれなかったのかもしれないが、せめて扉の裏にすればよかったのに。

★★★★(2007.8.23 黒犬)

講談社 1300円 978-4-06-214033-1

posted by Kuro : 17:04

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