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July 13, 2007

海野碧『水上のパッサカリア』○

 第10回日本ミステリー大賞新人賞受賞作。自動車整備士の大道寺勉は、三年前に不慮の事故で亡くした恋人のおもかげをしのびつつ、彼女が愛した飼い犬ケイトと湖をのぞむ家で静かに暮らしている。そんなわび住まいにある夜、来客がある。不在のあいだに窓を破って入り込んだ男女三人を見た勉はとくにおどろかなかった。なぜなら、かつて身を置いていた「始末屋」と呼ばれるトラブル解決請負業の仲間だったからだ。勉は彼らに恋人の死にまつわる衝撃的な事実を告げられる。
 田舎町に流れてきた自動車整備士の男が、じつはアメリカのサバイバリストのキャンプで訓練を受けたすごいやつだったという話。裏稼業仲間とふたたび組むことを決めた勉は、その能力をおしみなく発揮するが、例によって裏には裏がある。
 キャラ立ち、ストーリーの案配ともによく、最終選考委員をうならせるだけのことはあると思うが、人の生死を扱う小説に必要な品格に欠けるような気がして、好きになれなかった。日本のハードボイルドってこんなものだったか。

★★★(2007.6.14 白犬)

光文社 1400円 978-4-334-92541-3

posted by Kuro : 21:29

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トラックバック時刻: July 14, 2007 11:21 PM

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