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July 14, 2007
酒井順子『枕草子REMIX』○
『負け犬の遠吠え』でブレイクしたコラムニスト酒井順子が、清少納言の『枕草子』を平成女言葉で読み直した本。ちなみに清少納言と酒井順子はちょうど1000歳ちがいなんだそうです。
なにより訳文がよい。「イベントというもの」の章から引く。
説経の講師は、顔よき。講師の顔をつと目守らへたるこそ、その説く言の尊さも、おぼゆれ。ひが目しつれば、ふと忘るるに、「にくげなるは、罪や得らむ」とおぼゆ。この詞、停むべし。すこし齢などのよろしきほどは、かやうの罪得がたのことは、書き出でけめ。今は、罪いとおそろし。(p.68 『枕草子』第三十段より)
説経の講師は、顔のいい人に限る! 講師の顔をじっと見つめるからこそ、言っていることの尊さも感じられるのに。よそ見をすればつい忘れてしまうから、「ブス男は罪」って思う。……あ、こんなことを書くのは、やめておこうっと。もう少し若ければこんな罰あたりのことも平気で書いただろうけど、今となっては仏罰が恐ろしいわ〜(著者訳 p.68)
このように訳したうえで、
「仏罰が恐ろしいから書くのはやめておこう」という文章に、
「書いてんじゃん!」というツッコミが入ることをじゅうじゅう承知の上で彼女は、「だって顔がいいに決まってるしー」と、開き直っている。(p.69)
と、解説をくわえている。楽しく読んだ。
★★★☆(2007.6.16 白犬)
新潮社/新潮文庫 438円 978-4-10-135117-9
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posted by Kuro : 17:55
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