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June 18, 2007

トマス・ハリス『ハンニバル・ライジング(上・下)』○

 ハンニバル・レクターシリーズ最新作。シリーズ4作目にして明かされるハンニバル・レクターの生い立ち。リトアニアの古城で暮らしていた8歳のときから、パリでの学生生活を経てアメリカに渡る18歳までの十年間を描く。
 どういう経緯でこの“続編”が書かれたのかは不明だが、謎は謎のままでよかったのではないのかと思わなくもない。この前三作とは毛色のちがう“裏付け”はほんとうに必要だったのだろうか。訳者もそこらへんを心配してか、巻末の解説のなかで、本編のエピソードやせりふを深読みしたうえで、この稀代の怪物にまつわる「やはり謎は明瞭に解き明かされていはいない」と、やや苦し紛れに述べつつも「本書は怪物誕生の“創世記”というよりも、たんに、ハンニバル・レクターという特異なアンチ・ヒーローの生涯を画した特異な青春を興趣豊かに語った一編と受け止めたほうがいいような気がするのである」とつぶやいておられる。うん。そういうことなら、唐突に“日本”を取り入れたのも「興趣」の一部として納得できる。どうやら本書は外伝のようなものだと思って読んだほうがよさそうです。
 本書もまた映画化され、ただいま絶賛上映中。同シリーズでは初めてトマス・ハリス本人が脚本を書いている。

★★★★(2007.4.7 白犬)

"Hannibal Rising" by Tomas Harris 高見浩・訳 新潮社/新潮文庫 上・下各514円 978-4-10-216706-9978-4-10-216707-6

posted by Kuro : 01:14

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