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February 04, 2007

スコット・フィッツジェラルド『グレート・ギャツビー』○

 1925年にアメリカで出版されたスコット・フィッツジェラルドのあまりにも有名な作品の新訳。日本では1957年に野崎孝訳で研究社から出版された『偉大なギャツビー』がもっとも古いようだ。ほかに『華麗なるギャツビー』というタイトルで早川や角川からも出版されているが、わたしがむかし読んだのはカバー写真が盛装したロバート・レッドフォードの文庫。版元がどこだったかは忘れた。もうね、どれがどれなんだか。映画は1974年にレッドフォード主演でコッポラが撮った『華麗なるギャツビー』[Amazon]がもっとも有名だが、その前に1926年1949年にも映画化されている。2000年のリメイク版といわれているのは、どうやらテレビドラマ用らしい。以上はすべてネット上の情報です。ご参考まで。調べている過程で、古い研究文献などのなかに「ギャツビー親分」とか「大山師ギャツビー」というタイトルを見つけたりして、おもしろうございました。
 60歳になったら訳すと広言してきたが待ちきれなかった、と約30ページにもおよぶ訳者あとがき「翻訳者として、小説家として」にある。いまや日本を代表する小説家となった訳者が「これまでの人生でめぐり合ったもっとも重要な本」と明言するのだから、その思い入れは並大抵ではない。決して批判的ではないにしろ、先行訳は「僕の考える『グレート・ギャツビー』とはちょと(あるいはかなり)違う話みたいに思える」とも述べている。むろん本書は訳者が村上春樹であることが最大の特色なのだし、だからこそ多くの読者を獲得することができるともいえるのだが、この世界中で読み継がれてきた作品を堪能するためには、まず、村上春樹の顔を頭からはずして読むことを強くおすすめしたい。

★★★★★(2006.12.29 白犬)

"The Great Gatsby" by Scott Fitzgerald 村上春樹・訳 中央公論新社 820円 4-12-403504-7


posted by Kuro : 23:45

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