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February 05, 2007

ジャック・リッチー『10ドルだって大金だ』○

 短篇の名手ジャック・リッチーの傑作集。故人です。訳者あとがきによると、生涯に350を超えるショート・ミステリーを執筆したが、本国で生前にまとめられたのは、1971年に映画化された「妻を殺さば」をふくむたったの一冊で、没後にようやく二冊目が編まれたそうです。日本では2006年秋に晶文社から出版された傑作集『クライム・マシン』が意外と玄人受けし、「このミス」06年版の海外編第1位を獲得したことで、にわかに注目を集めたということらしい。で、その『クライム・マシン』に続く第二弾が本書。
 収録作品の約半数が1960年代に発表されたものだが、それにしてはさほど古びたかんじがしないのは、評判通りの作品の軽妙さゆえか。ふだん、長くて難しいミステリーばかり読んでいる向きには物足りないかもしれないが、ときにはこういう作品で頭をやわらかくするのもいい。おしゃれで、気が利いている。
 町の小さな銀行で発生した10ドルの差額をめぐる表題作のほかでは、前出の「妻を殺さば」、同じく妻殺しの「とっておきの場所」、光恐怖症の超人「キッド・カーデュラ」などが印象深い。迷刑事ヘンリー・ターンバックルものは、せりふまわしの懐かしさとともに楽しく読んだ。

★★★★☆(2006.12.30 白犬)

"The Enormous $10 and Other Stories" by Jack Ritchie 藤村裕美 他・訳 河出書房新社 2000円 4-309-80101-3


posted by Kuro : 00:55

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