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January 12, 2007

永井するみ『欲しい』●○

 2006.12.20初版。初出「小説すばる」2005年4月号から2006年7月号まで不定期。連作短篇として発表されたものを長篇に仕立てなおしたのかな。
 主人公は人材派遣会社を経営する女性社長、独身。商社取締役の愛人がいるが、しょせん不倫の身の上、ずっと一緒にいるわけにはいかない。愛人が帰ると、派遣ホストを呼びつける、というなかなか元気のよい42歳。
 主人公由希子の派遣した女性がある時トラブルに巻き込まれる。派遣先に別れた夫が現れ、金をせびるというのである。派遣先の人事課長との面談中、またしても元夫が現れ、その女性ありさは辞めざるを得なくなる。夫の暴力から逃れるために子供を連れて離婚したというありさを、由希子はどうしても放っておくことができず、次の仕事や研修を世話しようとするのだが……。
“心理の表裏を抉る注目作家の傑作長編。”
 と帯にはあり、それはちょっと褒めすぎだと思うけれど、まあそんなサスペンスものです。
 うーん。今一歩だったかな。二歩ぐらいかな。“真相”もありきたりといえばありきたりだし(小説では新しいかもしれないけれど、現実ではいくらでもあると聞きます。現実の後追いじゃあ、あまり評価を高くはできません)、最後の最後に明かされるは、そりゃまあそうなんだろうけれども、ちょっと説得力に欠けると思えた。だとすれば少々説明不足ではないか。
 また、事件のキーになる無理がありすぎではなかろうか。

★★☆(2007.1.9 黒犬)


 初出「小説すばる」。女性起業家の私生活と、その恋人の死をめぐる連作短編集。
 主人公の紀ノ川由希子は女性誌のインタビュー記事に出てきそうな人物である。外資系ホテルを経て30歳で渡米しMBAを取得。35歳で人材派遣会社を設立してそこそこ成功している。恋人には家庭があるが、そこらへんはたゆまぬ精神力で乗り切り、さびしくなったらなじみの高級出張ホストと遊ぶ。そんな日々のなか、由希子の会社の派遣スタッフ、槙ありさがトラブルを起こす。別れた暴力夫が派遣先に再々押しかけては金をせびるというのである。由希子は一児をかかえるに彼女に同情し、契約解除後も連絡を取り続けるが、その一方で恋人から意外なことを聞かされる。ありさと思われる人物が出会い系サイトに書き込みをしているというのだ。疑念にかられた由希子はありさ母子のアパートを訪ねるが会えず、その翌朝、警察からの電話で恋人の死を知る。
 いくつものありがちな設定をセンスよくまとめている。ジャニーズ系の男優などを配してテレビドラマに仕立てたらウケるかもしれない。だが読み物としてはアイディア倒れというか、タイトルとして掲げたテーマが消化しきれていない印象。もう一押し、欲しい。次作期待。

★★★(2007.3.5 白犬)

集英社 1800円 4-08-774833-2

posted by Kuro : 01:15

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トラックバック時刻: January 13, 2007 12:21 AM

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