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December 03, 2006

川上弘美『ニシノユキヒコの恋と冒険』●○

 2006.8.1初版。単行本は2003年11月刊。西野幸彦というプレイボーイの生涯を、かかわりのあった十人の女が語る、連作短篇集。
 二枚目でセックスも上手く、女には優しくてひたすら低姿勢。それでも最終的には捨てられたり振られたりもするわけだが、まあ世間にはダメ男DV男から逃れられない女もいるので、そんなものでしょう。純粋で純情なのかバカなのか、とらえどころがない男なのだが、どこか憎めない(のではあるまいか。女心は私にはわからんけど)。それはきっと、ニシノユキヒコが実在の人間ではなく、ファンタジーの世界の住人、いわば女にとっての妖精だからなのであろう、と思ったりもしてみましたが、さて。

★★★☆(2006.10.8 黒犬)


 希代のモテ男、ニシノユキヒコをめぐる連作集。彼と情交のあった十人の女の物語を通じてニシノという男とその人生をあぶり出すという試み。ニシノさん、西野君、ニシノくん、ユキヒコ、幸彦などなどと関係性によって呼び方が変わるところが興味深い。
 この男、そうとうなくわせ者だが嘘つきではない。バカ正直と言ってもいい。だから女から信用されない。だれにも正直なように、じぶんの気持ちにも正直だからだ。そのときしたいようにしかしないし、したくないことはしない。と同時に節操もないから、結果的に女に去られてしまう。そのくせ「どうして僕は、だめなのかな」(「おやすみ」p.93)などとつぶやくのである。ぜひ男性読者の感想を聞いてみたい。

★★★★(2006.10.28 白犬)

新潮社/新潮文庫 438円 4-10-129234-5

posted by Kuro : 22:05

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comments

こんばんは。先日はTBありがとうございました。
ニシノユキヒコが妖精とは、面白い解釈ですね!
つい、なるほどなぁ…と思ってしまいました。
そして、確かに女性と男性とでは、解釈が異なりそうな作品ですよね。
わたしはニシノユキヒコが愛しくなっちゃったクチですが。

投稿者 ましろ : December 6, 2006 06:03 PM

ましろさん、こんばんは。

もうね、男子の敵ですよニシノユキヒコは! あんなやつ、悪いヤツに騙されて先物取引に手を出して山奥に捨てられちゃえばいいんですよ!(笑)
ちぇっ。
これってアレですかね、悪女系に騙される男の裏返しというかんじなんでしょうかねえ。謎です。

投稿者 黒犬 : December 6, 2006 09:12 PM

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