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November 18, 2006

ジェフリー・ディーヴァー『12番目のカード』○●

 マンハッタンのアフリカン・アメリカン歴史博物館でレイプ未遂事件が発生。襲われたのはハーレムの高校に通う少女ジェニーヴァ・セトル。彼女は図書室で解放奴隷だった祖先のことを調べていた。いったん逃走した犯人は捜査中の現場に舞い戻り、博物館のスタッフを射殺、ジェニーヴァを執拗に追い始める。現場鑑識にあたったライムとサックスは、犯人の遺留品などから、これが単なるレイプ未遂事件ではないと推理。その推理はやがて140年前の公民権運動をめぐる歴史の闇へ深く分け入って行く。
 四肢麻痺の科学捜査専門家《リンカーン・ライム》シリーズ第6作。
 少女ジェニーヴァが小賢しく生意気なティーンエイジャーではなく、やせっぽちのガリ勉タイプだというのがいい。彼女はその一徹さと頭の回転の早さをもって、マンハッタン一の変人ライムの心をとらえる。決して流されず、サイコ野郎につけ狙われながらも屈しないひたむきさはあっぱれというほかはない。シリーズ6作品のなかでも強く印象に残るキャラクターである。
 今回はニューヨーク市警の刑事ロン・セリットーのエピソードが秀逸。ほかに新人パトロール警官のプラスキーとサックスのやりとりなど、警察小説としての読みどころもはずせない。2段組520余ページ、一気読み必至の快作。秋の夜長におすすめ。

★★★★★(2006.10.25 白犬)


 2006.9.30初版。〈リンカーン・ライム〉シリーズ第六作目。
 なにしろこのシリーズは期待が大きくて、ちょっとでも下手を打たれると途端にバカヤロになってしまうのだが、しかし相変わらず期待を裏切ることなく、途中でとめることもできず(まあさすがに二段組み530ページを一気読みというわけにはいかないが)、とにかくがしがしがしと読み進めるのみ。
 今回、中心になるのは勉強熱心な黒人少女ジェニーヴァ。図書館で調べ物をしていた彼女を何者かが襲うが、機転を利かせて逃げ延びることができた。現場の遺留品から犯人は強姦が目的だったと思われたが、ライムとサックスの目はごまかされなかった――。
 ええい、こまごました説明は不要。感想だって不要だ(笑)。いつものアレだ。ライムのアレだ。サックスのアレだ。なにも心配することはない。ただ、読め。
 まだこのシリーズを読んだことのない人は幸いである。これから読むという幸せが待っている。読むならば第一作から順番に。第三作まではすでに文庫になっているから、お財布にも通勤時の鞄にも優しい。

★★★★☆(2006.11.14 黒犬)

"The Twelfth Card" by Jeffery Deaver 池田真紀子・訳 文藝春秋 2095円 4-16-325290-8

posted by Kuro : 14:30

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comments

はじめまして。
TBありがとうございました。
書評がとても嬉しくて楽しかったのでご挨拶に。
ジェニーヴァは本当に良かったですね。
そしてディーヴァーはやっぱり面白いです。

投稿者 でこぽん : November 18, 2006 05:08 PM

こんばんは、でこぽんさん。コメントとトラックバックありがとうございます。
ディーヴァーは相変わらず、安心して驚かせてくれますね(ちょっと矛盾したいいかたですが、ファンのかたならわかっていただけるかと)。今年の新刊を読んだばかりなのに、はやく次のが出ないかと首がぐんぐん伸びてキリンになってしまいそうです。
今後ともどうぞよろしく。

投稿者 黒犬 : November 19, 2006 01:01 AM

初めまして。
TB有難うございます。

因みに、昨年12月邦訳の『死の開幕』(本国では1990年刊行)は、10人待ちです。

投稿者 poppo : February 14, 2007 09:13 PM

TBさせていただきました。

十分楽しませてくれるこの著者のサービス精神に脱帽って感じです。

投稿者 タウム : March 12, 2007 09:02 PM

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