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November 19, 2006

木堂椎『りはめより100倍恐ろしい』●○

 2006.2.20初版。初出「野性時代」05年12月号。第1回野性時代青春文学大賞受賞作。
 話題になって……るんですか? 
 タイトルがわけわかんなくて、でも帯を見ればすぐわかってしまって、「いじり」と「いじめ」の違いなんて、当事者である中高生には切実かつ危険なものなのかもしれないけれど、別にどうということもないし、現実の「いじめ」による自殺などになにか一石を投じるような作品かというとそうでもなく、これが青春文学なのだといわれれば、はあそうですかごくろうさん、としか言えない。
 同じく帯に書かれている《読者選考委員》や書店員の評もさして宣伝文句になっているとも思えず、

読み手の器量を問われる作品だ。(丸善平塚店店長 小板橋頼男)

 といわれるならば私にはその器量とやらがないということなのだろうが、まあ別にかまわんなあとしか感想はない。『野ブタ。をプロデュース』のほうがまだ、小説に仕立て上げようという意志が感じられたように思う。

☆(2006.9.2 黒犬)


「りはめ」という化け物の出てくるホラー作品かと思っていたらちがいました。
 第1回野性時代青春文学大賞受賞作。著者は17歳の男子高校生。筆名は「こどう・しい」と読みます。約250枚にわたる全文を「すべてケータイで書いた」とエラソーにあるが、いまの若い人のケータイ依存度からしてみれば驚くにあたらないし、本作の文章に「ケータイらしさ」がうかがえるような特徴を見いだすこともできない。ケータイに親指二本打ちで書こうがワープロで書こうが原稿用紙に万年筆で書こうが石板にロウ石で書こうが小説は小説ということで。
 りは「いじり」のり、めは「いじめ」のめ。中学時代にいじられキャラだった羽柴典孝の高校デビューと、仲間内でのポジションをめぐる攻防を描く。いじり・いじられについては、若手芸人が大勢でギャーギャー言ってるようなテレビ番組を参考にしてください。
 テーマを逸脱することなく、さほどダレもせず、最後まで飽きずに読めた。賞をとるだけのことはある。わたしは本作で「おな中」とか「ゲッチュウ」などといった若者言葉の適切な用方を学んだような気がする。
 いやしかし、同年代の人が書いたものしては登場人物が幼稚すぎやしないか。おなじ学園ものの『野ブタ。をプロデュース』でも感じたが、いまどきの男子高校生ってこんなものなのかなあ。いいけどさ。

★★★☆(2006.9.27 白犬)

角川書店 1200円 4-04-873679-5

posted by Kuro : 23:43

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