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August 23, 2006

岡野宏文×豊崎由美『百年の誤読』○

「ダ・ヴィンチ」2002年9月号〜2004年4月号の人気連載(全20回)に加筆訂正。付録「百年の後読」は「リテレール別冊」掲載文を再構成。
 ベストセラーに良書なし? 1900年から2004年までの各年の話題作とベストセラー109作品を徹底検証した文芸対談。徳富蘆花『不如帰』から片山恭一『世界の中心で愛を叫ぶ』まで。
 この冗談企画に大まじめで目くじらを立てる人がいるというのが可笑しい。タイトル、装幀からして洒落ではないか(この装幀に焼酎のラベルを思い浮かべた人はかなりの通である)。近年の作品はともかく、過去の「名作」がこうして取り上げられたことを、むしろ喜ぶべきであろう。クサしてあればあるほど読んでみようという気になる、わたしのような人間もいるのだから。
 さて、対談内容もすばらしいが、著者二人による脚註が愉快。ご参考までに豊崎氏による石原慎太郎の註を引いておく。

 いしはら・しんたろう(1932年〜)
 小説家にして政治家。湘南のお坊ちゃまとして育ち、高校では一級下の江藤淳の影響もあり、左翼運動にも関わりながら、今は差別意識丸出しの男尊女卑おじさん。一橋大学在学中、『太陽の季節』で文學界新人賞と芥川賞を受賞。(中略)99年より東京都知事に。芥川賞選考委員も長らく務め老害をまきちらしている。

 各章ごとに簡単な世相なども網羅した文芸年表、巻末には人名・タイトル・ことがらから引ける親切な索引付き。資料性抜群。とくに本好きにおすすめ。

★★★★☆(2006.8.12 白犬)

ぴあ 1600円 4-8356-0962-X

posted by Kuro : 17:55

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トラックバック時刻: August 23, 2006 06:43 PM

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トラックバック時刻: August 23, 2006 07:28 PM

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トラックバック時刻: August 24, 2006 12:13 PM

comments

TBありがとうございます。
こちらからのTBが2回送られてしまいまして、邪魔なようでしたら、お手数ですが時間あるときにでも消して下さい。
この本、楽しかったです。読んだときは、昔の文学も敬遠せずに手にとってみよう思ったのに、その後ぜんぜん手に取ってませんわ。(汗)まあそんなもんかしら…。

投稿者 るみねえ : August 23, 2006 06:49 PM

表紙が焼酎のパロディとは知りませんでした。
この本のおかげで「Deep love」は百年の未読です。

投稿者 bibliophage : August 23, 2006 07:33 PM

るみねえさん。
この本、じつはわたし後ろのほうから逆に、時代を遡るようにして読みました。最初のほうから読み始めたら数ページで眠くなちゃったので。ハハ どこから読んでも楽しめる本だと思います。

bibliophageさん。
高価な焼酎だからか、お目にかかることは少ないですね。書店などで本のそばにさりげなく焼酎を並べておくと面白いかもしれません。

投稿者 白犬 : August 26, 2006 01:19 PM

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