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February 03, 2006
石持浅海『扉は閉ざされたまま』●
2005.5.30初版、2006.1.5第3刷。「このミス06年版」第2位。
大学時代のサークルの同窓会が成城のペンションで開かれ、7人があつまる。伏見は後輩を殺害、密室をつくりあげ発見を遅らせようとする。しかし女性参加者のひとり優佳だけが疑問を抱き、犯人伏見を追いつめていく。
優佳に対しては犯人は誰で、どうやったのか、読者に対してはなぜやったのか、という二重のミステリーになっている。評判はいいようなのだが……どうも俺には向いていないっぽい。
成城に高級ペンションっていう舞台設定からして、なんだかなあと思ってしまうのだ。なんで成城。登場人物のひとりの祖父が住んでいた邸宅という設定なんだけど、無理があるよなあ。山のなかの別荘でじゃないのは、要するに“高級住宅街のなかにあるからあんまり騒げない”というだけの理由だもん、説得力がない。そもそもあのへんでペンション(せめてオーベルジュとかいえよ)の営業が許可されるのか。
登場人物たちも、なんだか薄っぺらい。経歴職歴その他を並べてみても、どうにも設定書を読まされているだけという印象しかうけないのだ。伏見は大学院卒業後6年、ということは登場人物は20代後半から30歳前後。こんなもんなんだろうか。それとも作者の力量なのか。
いや、別にリアリティがなかろうが舞台が現実離れしていようがそんなことはどうでもいいのかもしれない。パズルと考えれば。しかし細部をつくりこんでこそゲームが楽しめるという側面もあるはず。本作においてつくりこむべき細部とは、酒であろう。なにしろ登場人物は軽音楽部のなかでも酒好きがあつまって仲良くしていたという《アル中分科会》メンバーなのである。夕食時には当然酒を飲む。そこらあたりはどうか。
登場人物のひとりが、余市蒸留所限定
余市のカスクストレングス、シェリー樽の十五年物(p.61)
を持参する。じつにうらやましい(笑)。しかしそれをきいた《アル中分科会》メンバーの台詞として、
カスクストレングスだから、どうせ水で割らなきゃならない。(p.61)
とはなんたることか。酒好きならストレートで飲め。でなけりゃ、せめて“トゥワイスアップ(twice up ウイスキーと水を1対1の割合でわって飲むこと。氷は入れない)で”ぐらいのことを言わんかい。この著者、そんなに飲んべえじゃないのかもしれん。
ワインは「オーパス・ワン」(2001年物で2万円ぐらいですかね)だ。すげえなあ。でも知ってるのは持ってきた当人とほかにひとり。それを飲んだメンバーたちはというと、
「ワインってあんまり飲まないけど、こういうのもあるんだ。――っていうか、これがワインなんだ」
「ほんと、おいしい」(中略)「アメリカ人は味にうるさくないってイメージがありましたけど、こんなのもの作っちゃうんですね」
(中略)「これ、すごいっすよ。伏見さん」(p.114)
なんだかなあ……。つまらん。つまらんよそんな反応。せっかくのワインなのにさあ。1脚1万円以上する「リーデル」だの、高級っぽいアイテムはいろいろ出てくるけど、みんな小道具としてしかあつかわれていない。並べておけば高級感が出るだろう、みたいな。
動機も、弱いしなあ。そんなことで殺すか人を。あれで萎えたよ俺は。
でもきっとピュアなんでしょうね。みなさん。
つまらないわけじゃないんだけどね。でも、乗れなかった。
★★☆(2006.2.1 黒犬)
祥伝社/ノン・ノベル 838円 4-396-20797-2
posted by Kuro : 15:44
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著者:石持浅海
書名:扉は閉ざされたまま
発行:祥伝社
緊迫度:★★★★★
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トラックバック時刻: February 15, 2006 02:37 PM
comments
私も同じ感想でした!!!何でこのミス2位なんでしょうねえ。
私も同じ感想でした!!!何でこのミス2位なんでしょうねえ。
投稿者 michy : February 3, 2006 06:41 PM
michyさま。
コメントありがとうございます。
やー、なんででしょうねえ。「容疑者X」の1位には納得なんですけどねえ。
倒叙型ということで物珍しさがあったのでしょうか(いまどきさほど珍しいとも思えませんが)。
『月の扉』のほうが、めちゃくちゃな設定であるがゆえに、なんとか許容できたような気がします。
今後ともどうぞよろしく。
投稿者 黒犬 : February 3, 2006 11:12 PM
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