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November 02, 2005

古今亭志ん朝『世の中ついでに生きてたい』○●

 落語の話、芸談、そして父志ん生の思い出。話2001年10月に肝臓がんで亡くなった古今亭志ん朝の対談集。初出「週刊文春」「週刊朝日」などなど。1973年〜2001年までの記録から名座談をピックアップしたものと思われる。お相手は山藤章二、金原亭馬生、池波正太郎、池田弥三郎、結城昌治、中村勘九郎、荻野アンナ、江國滋、中村江里子、林家こぶ平。
 ご同業はもちろんのこと、そうでない相手との話もなかなか興味深い。たとえば94年の「文學界」での対談で、江國滋が無礼を詫びたうえで「古典落語の同じ咄をずーっとやっていて飽きることはないのか」という率直な質問をするあたり。もう少し評判になってもいい本だと思う。

★★★★☆(2005.10.10 白犬)


 2005.9.30初版。初出さまざま対談相手さまざま、な志ん朝対談集。なにしろ一番古いのは73年、志ん生が亡くなってしばらくたってからの山藤章二とのものだし、最後は01年、志ん朝本人が亡くなる少し前のこぶ平とのものだ。こぶ平との対談が載った「東京人」は買った記憶があるが、たしか発売時にはもう亡くなっていたのではなかったか。
 私は落語を聞くのは好きだが、かといって寄席やホールで生の落語を聞きに出かけるほど熱心ではないという、中途半端なファンなのだけれど、それでも志ん朝はすごいという話は(主として小林信彦のコラムなどで)耳にしていた。そういうぬるいファンである私が《テレビで》《落語を見て泣いた》のは後にも先にも志ん朝さんだったんだもんなあ。死ぬの早すぎるよなあと今でも思ったりする。
 対談相手は、彼と同じようにすぐれた父をもつ勘九郎やこぶ平などから作家・学者、あるいは実兄の馬生など多彩。中村江里子との対談は案の定どーでもいいというかバカ丸出しで、収録しなくてもとも思うが、それ以外はそれぞれに面白い部分がある。しかしそれにしても63歳なんてね、まだこれからだったのになあ。
 もしかするとこれってけっこう貴重な本なのかもしれない。それだけに、

荻野 もう、私、全身恐が縮してます。(p.125)

 みたいな誤植(なんだろうねえ。キョウガシュクなんていう洒落があるなら――また荻野アンナだからそこらへんが危ないといえば危ないのだが――普通に考えれば、《全身が恐縮してます。》だろうね)は惜しいというかみっともないというか……。

★★★☆(2005.12.05 黒犬)

河出書房新社 1800円 4-309-26851-X

落語家の師弟関係や改名・襲名歴などの参考に。

posted by Kuro : 03:21

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comments

すみません。間違って同じものを沢山送ってしまいました。一つを残し後は削除お願いします。

投稿者 CatSchroedinger : November 6, 2005 12:49 AM

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