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October 07, 2005

島本理生『ナラタージュ』○

 父の海外転勤でひとり暮らしを始めた大学2年生の工藤泉は、高校の演劇部の顧問、葉山に卒業公演に参加してくれるよう頼まれる。かつて思いを寄せ、彼の家庭の事情から一度はあきらめた葉山との再会に泉の心は揺れる。泉の変わらぬ思いを知りながら、こたえることのできない葉山。そして二人は――。
 高校在学中に『リトル・バイ・リトル』が第128回芥川賞候補となり、第25回野間文芸新人賞を最年少で受賞した島本理生の初の書き下ろし長編740枚。
 世界史の教師にして演劇部顧問の葉山は32歳。もしこの男が友だちだったら、2、3発殴って絶交しますよわたしは。2度目のミーティングのあと、葉山は泉にこう言う。「君とまたこんなふうに校内で会って話せるとは思っていなかった」(p.40)って、あーたが呼んだんでしょうよ。本作が「本の雑誌」2005年上半期ベスト1に輝いたのは、ずばりオッサン好きのする話だからにちがいない。北上次郎さんと池上冬樹さんの手ばなしのほめようがなによりの証拠であろう。はあ〜と、ついばばくさいため息をついてしまうが、途中で投げ出さなくてよかった。
 どのあたりからだろうか。泉の、じぶんの気持ちに対する誠実さに、すっかりひき込まれてしまっていた。泉と目下の彼氏小野くんとのやりとりに、じぶんが責められているような気にさえなる。言葉を尽くすとはこういうことなのだと、あらためて思った次第。若い才能に期待。

★★★★(2005.9.12 白犬)

角川書店 1400円 4-04-873590-X

posted by Kuro : 23:45

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トラックバック時刻: October 11, 2005 10:23 AM

comments

こんにちは。
TBありがとうございました。
島本理生さんはこれからも読んでいきたい作家さんです。
オッサン好きの話・・・ウケました(笑)

投稿者 ミチ : October 8, 2005 04:24 PM

トラックバックありがとうございました。
>もしこの男が友だちだったら、2、3発殴って絶交しますよわたしは。
爆。さすが白犬さん。わたしなんぞ、この手の男に若い頃・・・というやうなアホだったので、痛くて痛くてしかたなかったんですが、白犬さんのこの感性がまっとうなオトコをゲットするためには必要な条件であろうと思われます(って、「ナラタージュ」のレビューに、なんつう感想を書いているのでせう)
>ずばりオッサン好きのする話だからにちがいない。
あ、そっか・・・。結構好きなオバハンもいるし(超爆)

投稿者 ahaha : October 9, 2005 03:35 AM

ミチさん。
ahahaさん。

ねーっ! でしょしょ?
でもさ、愛って奪い合うものなのかも、って思わなかった? 理屈ぬきで。惚れた弱み。あばたもえくぼ。

投稿者 白犬 : October 10, 2005 01:00 AM

こんにちは。トラックバックありがとうございました。
葉山先生への感想には大笑いしました。私だって殴りますとも。こういう男って一番たち悪いですけど、いそうですよね。はまる女も。
でもこの本は何故かすごく良かったです。男達があかん奴らやからなおさらよかったというか。不思議ですけど。

投稿者 ざれこ : October 11, 2005 10:56 AM

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