« 石田衣良『東京DOLL』● | Blog Top | 町田康『浄土』○ »

August 15, 2005

hanae*『小学生日記』●

 2005.7.25初版。単行本は03年12月、プレビジョン刊(ってどこ?)。そんなね、小学生の書いた作文なんて、ちゃんちゃらおかしくて読んでられますかいな。そう思ってました、確かに。
 この本のことを知ったのは、虫の居所・ならのさんのブログで見かけたのが最初でしたが(ロングバージョンの感想はこちら)、正直なところ、ふーん、としか思わなかった。だって小学生でしょ。で、モデル? 最近はU-15とかいってそういう小学生あたりの子ももてはやされて、親子そろってバカみたいに子供服ブランドに押し寄せていたりするらしい。その手のバカ流行を煽るためにつくられた本で、まあちょっと作文が上手だったっていうことなんだろうなと。海外生活とかもあっておしゃれだしなあ、と。
 先日、たまたま文庫になっていたのを見かけて手に取ってみた。1991年アメリカ生まれ。91年て。ついこないだじゃん。6歳で日本にもどり、10歳からファッションモデル。映画やCMにも出演していると。ほうほう。やっぱタレント本じゃん。
 ところが読んでみたら、これがなかなか。
 2005年が第55回だから、第51回というのや2001年。91年生まれの著者(と呼ぶしかあるまい)が10歳のときにその作文コンクールで読売新聞社賞(東京都審査、とあるので、ブロックごとに賞をあげているのかもしれないが)を受賞した「モトイと日本語」と、その翌年、同じコンクールで文部科学大臣賞を受賞した「ポテトサラダにさよなら」の2篇が、頭のこりかたまったオトナ(俺みたいな!)が読むにはいいかもしれない。
 この小学生の観察眼とそれを文章に置き換える能力というのはすごい。おじさん、一本とられたよ。あったことをそのまま羅列する、いわゆる「作文」とは、明らかに違う。本人はそのつもりはないのかもしれないが、短篇小説を読んでいる気分にさせられるのである(特に「ポテトサラダ〜」はとてもエッセイとは思えない)。
 一方、作文とはまったく関係ないところで、両親が離婚したり別居したりという、昔であれば人生の一大事であったことどもが、今の小学生たちにとっては実に身近な問題なのだということを知って、おじさんとしては多少ショックを受けたりもしたわけだが(むろんオトナの書いたものには話を盛り上げるためのスパイスとしていくらでも出てくるけどね)。それとて、読み手に、ああこういうふうに子供たちは受け止めて、あるいはやりすごしているんだなあと、著者の感覚をストレートに伝える文章力があるからこそなんだな。
 こういう才能は大切に育てていってほしいものだなあ。

★★★☆(2005.8.11 黒犬)

角川書店/角川文庫 438円 4-04-377601-2

posted by Kuro : 02:48

trackbacks

このエントリーのトラックバックURL:
http://dakendo.s26.xrea.com/blog/mt-tb.cgi/113

このリストは、次のエントリーを参照しています: hanae*『小学生日記』●:

» 『小学生日記』への思い入れのことなど from 虫のいい日々
3月に読んだ、hanae*ちゃんの『小学生日記』(角川文庫)について、先日(って... [Read more...]

トラックバック時刻: September 3, 2005 02:59 AM

» 小学生日記  hanae* from ゆらbooks
小学生日記 モデルのhanae*さんが小学生の時に書いた本。ということは、いわゆるタレント本?と思い、最初はあまり興味が持てなかったのですが、本屋に平積み... [Read more...]

トラックバック時刻: September 29, 2005 06:32 AM

comments

コメントをどうぞ。




保存しますか?