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July 10, 2005

伊坂幸太郎『死神の精度』●○

 2005.6.30初版。初出「オール讀物」「別册文藝春秋」2003〜2004年。《死神》を主人公にした連作6篇。
 寿命ではなく、自殺や病死でもない「不慮の死」の対象を調査し、「死」に値するかどうかを報告するのがこの死神の仕事。音楽を好み、CDショップで視聴をするのが趣味。人間ではないので受け答えが微妙にズレており、雨の日にしか現れない(というか、死神が現れると雨が降る)。たまには同業者と鉢合わせをしたり、吹雪の山荘で密室殺人事件に巻き込まれたりもする。正体を見透かされた老婆に、客集めの協力を乞われたりもする。
 例によってどこか不思議な空気に満たされた伊坂幸太郎の世界。死神だろうと悪魔だろうと、殺人犯だろうと泥棒だろうと、この人が書くとなぜかのんびりとした連中になってしまう。じつに独特。彼の描く登場人物たちとのとぼけた会話には惹かれるものがある。
 もっとも、「死」を決定されてはたまらんので死神には現れてほしくはないが。

★★★★(2005.7.5 黒犬)


 俺が仕事をするといつも降るんだ――クールでちょっとズレている死神が出会った6つの物語。初出「オール讀物」2003年12月号〜2005年4月号。表題作「死神の精度」は第57回日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
 死神というと、黒いマントを着て大きなカマを持ったドクロ顔を思い浮かべるが(なぜだろう?)、本書に出てくる死神はいたってふつうの人である。だが、その時々によって姿を変えるため特定はできない。死神の仕事は、対象となる人間の死の一週間前に接触して話を聞き、「可」もしくは「見送り」の報告をすること。どうやって対象が選び出されているのかは「部署が違うのでわからない」というのが可笑しい。
 表題作以外では、死神が逃走中の殺人犯と十和田湖までドライブする「旅路を死神」が印象に残ったが、全篇当たりはずれなし。買って損なし。

★★★★☆(2005.7.12 白犬)

文藝春秋 1429円 4-16-323980-4

posted by Kuro : 14:18

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