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February 27, 2005

五十嵐貴久『TVJ』●

 2005.1.10初版。初出「別册文藝春秋」247号〜253号。だから何年に書かれたのかわかんないんだってば不親切だな。
 ともあれ、「ダイ・ハード」です。お台場に新しく建てられたインテリジェントビル――ニュー・ミレニアム・ビル。25階建てのツインタワーの片方ゴールドタワーには民放放送局テレビジャパンが入っている。新社屋への移転を記念した“72時間テレビ”放送の当日、武装集団がテレビジャパンを占拠した。防火扉は封鎖され、局内にいるのは人質となった社員たちと武装集団のみ。ただひとり犯人の拘束を逃れた経理課OL高井由紀子29歳は、婚約者を救うために立ち上がる。
 ワン・アイディア、ノン・ストップ、ジェットコースター小説、とでもいうんですかね。もろに「ダイ・ハード」なわけですが、ブルース・ウィリスがとくに訓練を受けたわけでもない普通の女子社員というところが――ところだけが違っています。だから下手すりゃコメディになってしまうんですが、そこを“交渉人”と武装集団のリーダー“少佐”の心理作戦でびしっと締め……ようとしたんだろうと思うけど、あまりうまくいってないような。
 テロリストたちの間抜けぶりやらツメの甘さやら、あるいは都合よくヒロインがピンチを逃れる(逃れなきゃ小説にならんのですがね)ことやら、気になるところがないわけじゃありませんが、この手の話は気にしちゃダメ(気にしたって、結末は見えてるしね)。映画をみるように、サスペンスを楽しまなくてはなりません。
 ま、一気に読ませる勢いがあったので、とりあえず合格。
 あ、それからこの本、装幀がちょっと凝ってます。書店で手に取ったら、帯(といってもカバーより3センチばかり短いだけの、背の高い帯なんですが)をめくってみてください。

★★★(2005.2.23 黒犬)

文藝春秋 1800円 4-16-323650-3

posted by Kuro : 15:56

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トラックバック時刻: February 27, 2005 06:09 PM

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トラックバック時刻: April 3, 2006 03:38 PM

comments

TBありがとうございます。
はじめまして、dolphinと言います。

「TVJ」の装幀、なかなかセンスありますよね。
僕も初めは、何でこんなにカバーが大きいのかと疑問に思いましたが、中を見て納得でした。

ちなみに、五十嵐さんの作品は『安政五年の大脱走』以外読んでますが、今のところハズレはありませんよ。
dolphinの勝手な評価としては、下の様になっています。
「リカ」         7点
「1985年の奇跡」 7点
「交渉人」       8点
「TVJ」        9点
「FAKE」       10点

愛のLAH LAH LIFE
 毎週水曜は『ドルフィンの読書工房』です。
お暇があれば、また寄ってくださいね。

投稿者 dolphin : February 27, 2005 09:45 PM

dolphinさま。

はじめまして。勝手にトラックバックしてすみません。
コメントありがとうございます。
そういえば『リカ』の人でしたね、五十嵐貴久は。あれはあまり感心しなかったのだけれど、『TVJ』は娯楽性充分で楽しめました。
またどうぞよろしくおねがいします。

投稿者 黒犬 : February 27, 2005 11:05 PM

こんにちは。
TBありがとうございます。
「TVJ」のような読んでいて楽しめる本はいいですよね。
細かいことなんか気にせず、一気読みですね(笑)

投稿者 bon : February 28, 2005 05:46 PM

bonさま。

やっぱりこの手のアクションものは、何も考えずに楽しむのが一番ですね。
といっても、あまり下手じゃああれこれ気になってしまって楽しめませんから、そういう意味では成功作だと思います。

今後ともどうぞよろしく。

投稿者 黒犬 : March 7, 2005 02:52 AM

はじめまして。
TBありがとうございます。
この本…装幀に何か仕掛けがあったのですか?
もっぱら図書館派のワタクシ…今すぐ確かめるすべもなく(笑)。
明日本屋さんでチェックしてみよーと思います。
(五十嵐さんゴメンナサイ)
「絶対ハッピーエンド!」と確信しながらもなお楽しめるのですからスゴイです。
まさに映画のような小説でした。

投稿者 ユミ : May 13, 2005 08:00 PM

ユミさま。

こんにちは。
そんなにたいした仕掛けではないんですが(というか図書館だとすでに帯ははずされている?)、やたら大きな(面積のある)帯なので気になっちゃうんですね。そしてぺろりとめくると、「おお、あははは」みたいな感じです。
ぜひぜひ書店でご確認くださいませ。

投稿者 黒犬 : May 14, 2005 02:58 PM

どうも、五十嵐貴久です。本人だったりします。
感想、どうもありがとうございます。
さて、そんなこんなで私の新刊「パパとムスメの7日間」が、このたび朝日新聞社から発売されました!47歳のパパと、17歳のムスメの体と心が入れ替わって起きる大騒動を描いた話でございます。よかったら、試しに読んでみていただければ嬉しいです。ではでは。五十嵐貴久でした。

投稿者 五十嵐貴久 : October 11, 2006 06:15 PM

五十嵐貴久さん、こんにちは。
って、わあ、ご本人さまですか。ええと、ええとどうもこんにちは。新刊発売おめでとうございます。本屋さんにいったらチェックしてみます。これからもがんばってください。

投稿者 黒犬 : October 12, 2006 02:39 PM

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