奥田英朗(おくだ・ひでお)


【長篇】
真夜中のマーチ
東京物語
邪魔
ウランバーナの森
最悪

【短篇集】
マドンナ
イン・ザ・プール

【エッセイ・NF】
泳いで帰れ
延長戦に入りました
野球の国



泳いで帰れ  4-334-97470-8
光文社 1400円

 2004.11.25初版。初出「小説宝石」2004年10〜11月号。『野球の国』につづくスポーツ観戦エッセイ集。今回のテーマはアテネ五輪。
 そう、あの長嶋ジャパンの盛り上がりぶりに乗って活躍を期待してアテネにまで行って、見事に期待を裏切られて帰ってくるというお話。タイトルである“泳いで帰れ”はふがいない日本代表野球チームに向けての捨てぜりふです。
 ギリシャ時間にギリシャシステム、そしてギリシャ料理。いいものもあれば悪いものもある。まあアゴアシつきでオリンピックを観られるのだからあまり文句言っちゃいけませんな。柔道や女子マラソンなど、ほんらいの目的ではなかった競技のほうが臨場感があふれていて楽しい。それだけ著者が野球に思い入れが深かったということなんでしょうけど。
 たしかに、あれだけ大騒ぎしたわりには、なんとも脱力な結果に終わったわけで、もう次回からはアメリカみたいに二軍でチームを編成するか、もしくはアマチュアだけで代表をつくったほうがよかろうとは思いますがねえ。
 読み物としてはとても面白いです。

★★★☆(2004.12.10 黒犬)


 初出『小説宝石』2004年10月号、11月号掲載『「野球の惑星」日本代表観戦記(アテネ・前後編)』改題。『空中ブランコ』で第131回直木賞を受賞した奥田英朗が、授賞式をぶっちぎって現地取材、抱腹絶倒、爆笑必至のロードエッセイ。
 オリンピック観戦記にもいろいろあるが、競技内容をロマンチックに語ったり、アスリートを称えたりといったような本ではない。内容的には村上春樹の『シドニー!』を思い浮かべていただくといいだろう。
 著者の旅に出る理由が「行ったやつが威張るから」というのがまず可笑しい。「五割増しで語られる」土産話に対して、行かない人間には発言権はない。だから行く。その言葉通り、多くの人が「生でオリンピックを見る」ということに抱く幻想を、見事に打ち砕いて下さる。いちおう「長嶋ジャパンを追いかける」という目的はあるが、野球の試合はが毎日あるわけではないから、ほかの競技も観戦するわけです。そのためにはチケットを手配しなくてははならないし、各会場まではるばる行かなくちゃならないし、並んでセキュリティチェックを受けなければならないし、観客席は暑くて喉が渇くし、陸上なんかどこ見ていいかわかんないし、他国の応援団はうるさいし、とまあ、土産話的には五割減の記述満載。出版社がかりの旅で、同行の編集者になにくれと面倒をみてもらってこれだから、個人でオリンピックなんか行くもんじゃありませんなあ。

★★★★(2005.1.16 白犬)


真夜中のマーチ  4-08-774666-6
集英社 1500円

 2003.10.10初版。初出「小説すばる」02年11月号、03年3月号、5月号、8月号。
 奥田英朗ひさしぶりの長篇。軽快なユーモア小説。帯にはスラップスティック小説とあるが、著者の几帳面さが邪魔してドタバタを追及しきれてないかもしれない。普通のユーモアピカレスク小説ぐらいな感じ。
 パーティ屋のヨコケン、商社マンのミタゾウ、元モデルのクロチェの3人が、ひょんなことから知りあい、裏世界の十億円を奪い取ろうと計画する。もちろん事はそううまく運ぶはずもなく……。
軽く、すんなり読める。もっとくどさが欲しい。もっとねっとりとしつこい小説を読みたい。が、たぶんこれが著者の持ち味なのだろう。この内容を『最悪』や『邪魔』みたいに濃密に書かれたらちょっとしんどいだろうしね。
 早く次作が読みたいものです。

★★★☆(2003.9.27 黒犬)


 獲物は10億円。男2人に女1人+犬。目指すは完全犯罪、のはずだったのに……。追いつ追われつ、三人と一匹が東京を駆け抜ける。奥田英朗の新たなるスラップスティック小説。
 25歳の健司は学生時代に自ら興したプロデュース会社の社長。と、いえば聞こえはいいが、ようするに「人を集めて上前をはねる」というやくざまがいのインチキ商売。そんな健司が企画したパーティーに、一流商社に勤務する御曹司、三田総一郎がやってくる。健司の見込み通り、育ちのいいボンボンはあっさりと健司の“美人局”のカモになるが、総一郎はじつは鉛筆削り器を製造する小さな工場の息子だったからさあたいへん。健司はおっそろしいやくざのフルテツに愛車ポルシェを取り上げられたうえ、いいように使われるはめに。そんなある日、フルテツが総一郎に借りさせたマンションの一室で賭場を開く。金のにおいを嗅ぎつけた健司は、鍵屋を雇ってマンションに侵入するが、そこで思わぬ妨害にあう。
 各キャラクターに著者の愛情が感じられる快作である。ワルになりきれないチンピラくずれの健司、とぼけた魅力の総一郎、紅一点の千恵による“ちぐはぐトリオ”それぞれの成長譚としても楽しむことができる。三人の年齢を25歳としたところは絶妙と言っていい。おすすめ。
 ちなみに千恵の飼い犬“ストロベリー”はドーベルマンです。

★★★★☆(2003.10.10 白犬)


延長戦に入りました The Game Went Into An Extra Inning  4-344-40367-3
幻冬舎/幻冬舎文庫 495円

 2003.6.15初版。単行本は2002年8月幻冬舎刊。どうでもいいが、最近の幻冬舎の文庫化・新書化の早さはひどいね。「火の粉」とか「嫌われ松子の一生」なんか、今年(2003年)のはじめに単行本が出て、つい最近新書になってたよ。そういうのって単行本を買った人には失礼だし、買ったくせに読んでない人(俺だ俺だ)には単行本を買う気を失せさせるし、結局は自分の首を絞めることになると思うのだがどうか。
 で、奥田英朗のエッセイ集。「MONOマガジン」に連載されたもので、だいたい92年から97年にかけて書かれたようだ。テーマはスポーツ全般。全体的にふざけているようなムードですが、そこここにこの人らしいまじめさがにじみ出ていたりして可笑しい。

★★★(2003.7.15 黒犬)


 ボブスレーの二番目の選手は何をしているのかと物議をかもし、ボクシングではリングサイドで熱くなる客を注視。さらにガニ股を余儀なくされる女子スケート選手の心の葛藤を慮る、デリケートかつ不条理なスポーツエッセイ34篇。
 雑誌『モノ・マガジン』連載「スポーツ万華鏡」をまとめた本。あとがきで「スポーツに関するちょいといい話を読みたいお客さんには非常に申し訳ない気がする」と著者本人が述べている通りの内容だが、ひじょうにおもしろく読んだ。それはわたしがいまだにサッカーの「オフサイド」もよくわかっていないようなお客さんだからだろう。495円はお買い得。通勤本に。

★★★★(2003.10.8 白犬)


野球の国  4-334-97386-8
光文社 1400円

 2003.3.25初版。初出「小説宝石」。沖縄編、四国編、台湾編、東北編、広島編、九州編の6章編成。なにかといえばこれが、地方野球エッセイなんですな。
 日本プロ野球を地方の球場で見る、といういちおうのコンセプトはあるものの、全体に、のほほん、というか、だらだら、というか脱力の空気が漂っている。そらそうだわな、雑誌に掲載したんだから仕事でもあっただろうけど、基本的には小説家の「余暇」だもんな。
 「九州編」での“某女性ジャズ・シンガー”の悪口には溜飲が下がりました、うひゃひゃひゃ。引用しちゃる。

 定刻十分遅れでスタート。
 始まって十分で大後悔。
 歌はお上手で結構なのだが、トークが耐えられないのだ。
 コテコテの関西ギャグ、ダミ声の関西弁、しかもくどい。ううっ。助けてくれー。
 なぜ歌だけにしてくれないのか。このトークはわたしにとって拷問だ。(p.242)

 とくにこの本をお勧めはしない。よっぽどプロ野球が好きな人は別ね。奥田英朗の大ファンも別。まずは小説を読んでほしいし。
 でも、まぼろしのデビュー作(なのかな?)『B型陳情団』を(しかも新刊でだ)読んだことのある私としては、なんか懐かしさも感じるんであった。細かく覚えてるわけじゃないですけどね。

★★☆(2003.4.3 黒犬)


マドンナ Madonna  4-06-211485-2
講談社 1400円

 2002.10.25初版。初出「小説現代」。おじさん小説5篇からなる短篇集。帯の背には“新オフィス小説”とあります。
 部下である二十代の女子社員に恋をしてしまう課長荻野。
 息子がダンサーになると言い出して戸惑う課長田中。
 営業から総務に異動となり周囲と衝突しまくりの課長恩蔵。
 同い年の女性を上司に迎えることになった課長兼部次長田島。
 再開発されたビル群に人を集めるために送り込まれた課長鈴木。
 いずれも四十代の課長さんが、会社と家庭のあいだに立って右往左往するお話です。おもしろい。
 おじさんたちの悲哀というと重松清の得意分野ですが、重松に比べると明るくていいです。深刻さが少ないともいえるかな。おじさんたちは一生懸命で、でも間抜けで、ひとりよがりでもあって、しかしいかんせんオジサンなのであった。ったくだせえオヤジだよなと思いながら読んでいたのだが、なんとまあ数年後には俺も彼らの年代になってしまうのだ。二十代の若者からみれば俺もこの本に出てくる課長さんたちと同じなのだ。うはあ。ま、人生なんてそんなもんだわな(どんな?)。
 2000年の暮れから2002年の夏にかけて発表されたものですが、さすがに最後(最新)の「パティオ」はうまくなっている。ちょっと山田太一っぽい会話だけど。

★★★★(2002.10.26 黒犬)


 部下に恋をする。高校生の息子がダンサーになると言い出す。同い年の女性が上司になる。日本でいちばんたいへんなのは「課長さん」。奥田英朗の新オフィス小説5編収録。
 全編「うまい」の一言に尽きるが、とくに、42歳の営業課長が、転属してきた女子社員に妄想を炸裂させる表題作「マドンナ」と、会社の慣例からいったん事務系部署に配属された局長候補を描く「総務は女房」いい。
『イン・ザ・プール』(文藝春秋刊)でユーモア小説にも幅を広げたということになっている奥田英朗。本書もややそちら寄りではあるが、大藪賞の『邪魔』や、映画になった『最悪』にも同様のセンスが光る。そろそろまた長いものが読みたい。

★★★★☆(2002.10.21 白犬)


イン・ザ・プール  4-16-320900-X
文藝春秋 1238円

 奥田英朗の連作短編集。初出「オール讀物」ほか5編。トンデモ精神科医・伊良部のもとを訪れる悩みを抱えた男女。毎日泳がずにはいられない水泳依存症、原因不明の持続勃起症、片時も携帯電話を手放すことができないケータイ中毒、何度も施錠を確認してしまう強迫神経症など、伊良部のもとを訪れる患者は真剣そのもの。でも伊良部は看護婦に注射を命じるほかはなにもしない。それどころか、患者の生活に踏み込んで一緒に楽しんでしまう。こんなことでいいのだろうか……。
 先日テレビに強迫神経症の女性が出ていた。彼女は知らない人を怖がるがあまり、いついかなるときでも夫に触れていないと気が休まらない。ふだんは手をつないでいるが、台所仕事など両手がふさがるときは、傍らに立つ夫の足を足で踏んでいる。その映像にわたしは思わず笑ってしまったが、本人にとっては深刻な問題だ。本書『いてもたっても』では、自宅の施錠や火の始末が気になって、外出先でいてもたってもいられなくなるルポライターが描かれているが、独り暮らし経験者なら、一度は覚えがあるのではないか。ようするに程度の問題なのだ。この種の病気は、専門医に病名を言い渡されたときから、新たに始まるのかもしれない。
 背に「新・爆笑小説」とあるのは、いささか大げさ。面白いけど(爆)までは行かぬ。手堅くまとまっているという印象。

★★★★(2002.6.1 白犬)


 2002.5.15初版。奥田英朗の新刊。「オール讀物」「別冊文藝春秋」に載った連作短編集。
 主人公は、というか、トリックスターは伊良部総合病院の神経科医伊良部一郎。注射フェチのマザコンのデブオタ医者。なんの因果かそいつに診察される羽目になってしまう五人の患者は、ひでえ医者だと思いながらも、なぜか通うのをやめられない。ドタバタしているうちに、症状軽減につながっていたりする、というパターンで5本。
 よくあるパターンですね。ただし、普通はこの医者、“ちょっと変わっている”ぐらいにとどめておくんでしょうけど、さすが『最悪』『邪魔』の奥田英朗、“すっげえ変、っていうか変態”ぐらいまで極端なところまで持ってっます。おかしいです。おかげで、普通だったら主人公の医者にたいして、案外いいやつじゃん、ってな感想を持つところですが、全然そんなことありません。やっぱりバカです。こんな医者イヤです。そういうところが、うまいなあと思う。

★★★★(2002.5.19 黒犬)


東京物語  4-08-774519-8  4-08-747738-X(文庫版) 
集英社  1600円
集英社文庫  619円

 2001.10.30初版。初出「小説すばる」。『最悪』の著者が描く80年代グラフティ。
 コピーライター田村久雄の18歳から30歳までの物語。名古屋から上京したその日に、後楽園でキャンディーズの解散コンサートをやっている。付き添ってきた母が帰り、下宿にひとり取り残された久雄は退屈のあまり同郷の友人を訪ね歩く。大学では演劇部に入り、彼女もできる。そして大学中退。時は1980年。都心の会社でコピーライターとして働く久雄。一橋大生が書いた『なんとなくクリスタル』が話題になり、同僚はルービックキューブをもてあそび、ラジオからはYMOのテクノポリスが流れる。やがて日本はバブル期に突入し――。
 このベタな懐かしさはどうだ。とくにバブル期の描き方は見事。入れ物に中身が追いつかないという、あのばかばかしさ。主人公と同じ年代でバブルの洗礼を受けた人なら、共感する場面がたくさんあるだろう。久雄を振り回す地上げ屋の郷田いい。
 とりとめのない青春。駆け足で通り過ぎた時代。同時多発テロで最悪の幕開けとなった21世紀、どん底景気の師走に少しむかしを振り返ってみるのはどうだろう。

★★★★(2001.11.21 白犬)


 文庫版は2004.9.25初版。単行本は2001年10月刊。
 名古屋出身の田村久雄が、大学受験のために上京(1978年)し、東京での暮らしや学生生活を経て、コピーライターとして独立する(1989年)、18歳から29歳までの物語。6篇の連作短篇集というかたちをとっている。
 著者とほぼ等身大かと思われる主人公が、東京と社会(バブル経済か)とそしてもちろん女に翻弄される様子がたのしい。
 80年代なんてごく最近のような気がするが(フィフティーズとかシクスティーズとかに比べれば、ね)、もう20年前なんだなあ。そういえば「ビッグコミック・スピリッツ」にも『東京エイティーズ』なんて作品が連載されてますな。「東京エイティーズ:http://www.eighties.jp/」などというサイトもあり(コミックのあらすじも「今週の東京エイティーズ:http://tokyo80.exblog.jp/」で読める)。おそらく、ちょうど“青春!”を振り返りたくなるのが40代のころで、そうすると20年前がなつかしかったりリバイバルでブームになったり(むろん放送や出版などの情報発信側の中枢にその年代の人がいるわけだ)するんだろうな。つまりあと10年たてば90年代がブームになると。
 まあそんなことはどうでもいいんだが。
 80年代がなつかしい人、80年代をなつかしむおじさんたちに振り回されて困ってる若い人(笑)にお勧め。中年を理解するのに役立つかもよ。

★★★☆(2005.3.8 黒犬)


邪魔  4-06-209796-6
講談社 1900円

 2001.4.1初版。平成11年の『最悪』に続く奥田英朗の長編犯罪小説。
 始まりは小さな放火事件にすぎなかった。似たような人々が肩を寄せ合って暮らす都下の町。手に入れたささやかな幸福を守るためなら、どんなことだってやる――。
『最悪』同様、平凡な生活者に光をあてている。家計を助けるためにスーパーで働く主婦・及川恭子の心境の変化、またそれに突き動かされるようにエスカレートする行動が、無理なく丁寧に描かれており先へ先へと読ませる。刑事・九野の葛藤と警察内部の事情もバランスよく配置されている。退職を迫られる九野と上司とのやりとりには思わずほろりとさせられる。
 惜しむらくは、不良少年の物足りなさ。また『永遠の仔』ばりのクライマックスには少々鼻白む思いがした。いい作品であればあるほど点が辛くなる。

★★★★★(2001.4.14 白犬)


 奥田『最悪』英朗の書き下ろし長篇、二段組454頁。
 ひゃっほー。こりゃおもしろいっす。
『最悪』と似たパターンで、17歳の高校生渡辺裕輔、34歳の主婦及川恭子、36歳の刑事九野薫、の3人が、少しずつからみあい追いつめられて破滅に向かうという話。
 高校生渡辺については書き込み不足のような気がしたが、その分パート主婦及川恭子の部分が濃厚でよろしい。スーパーでのストレス、ダメ亭主の事件、対スーパー待遇改善要求運動、と壊れていくさまが詳細で息苦しい。九野についても、交通事故で妻を亡くして鬱屈しているとか、上司から理不尽な命令を受け、さらには同僚からそのせいで攻撃されたりとか、きつい生活を送っておられる。そうするとやはりバカ高校生の追いつめかたが甘いかなあと思ってしまうのです。
 しかしそうはいっても筆力は安定しており読んでいてひっかからない(白犬は、女性の服装など“やっぱり男はわかってない”ってバレてしまう描写があるなどといっていましたが、オレは男だから気にならないのだった)。
 んー、『模倣犯』より費用対効果はよいかもね。今年のベストな本の1冊になりそうな予感。

★★★★☆(2001.4.10 黒犬)


ウランバーナの森  4-06-264902-0
講談社/講談社文庫 571円

 2000.8.15初版。奥田英朗の小説デビュー作。97年刊。
 癒し系、とでもいうのか(うへえイヤな言葉だ)、ビートルズ(ジョン・レノン)トリビュート系とでもいうのか。
 主人公は、世界的ポップスター「ジョン」。もちろんジョン・レノンがモデル。日本人ケイコ(もちろんヨーコ)と結婚し、子供をもうけ、表舞台からひっこんで主夫をやっていた七〇年代後半、軽井沢ですごしたある夏を書いた、ファンタジー。ううむ、大甘。便秘とかお盆とかトラウマとか、いろんなことを結びつけひっくり返してみたのはいいが、どうも甘ったるくていけない。

★★(2000.8.22 黒犬)


最悪  4-06-209298-0
講談社 2000円

 1999.2.18初版。おー、一気に読んだ。二段組み四百頁近いんだが、朝の通勤電車で読み始め、帰りの電車でも読み、帰宅して夕食後、酒飲みつつTV横目でみつつ、あれよあれよという間に読み終えてしまった。
 最初のうちは、語尾の「〜た。」連発が気になっていたんだけど、読み進むうちに物語に引き込まれ、気がつけば読了。
 これはどういうジャンルに所属するんだろう。俺的にはコメディ。犯罪小説、悪漢小説というよりも、スラプスティックです。チンピラ小僧、鉄工所社長、銀行の窓口姉ちゃんの三人の日常を紹介しつつ、彼らがじわじわじわじわと真綿で首を絞めるように(慣用句!)追いつめられ行き詰まっていく様子が描かれる。悲惨というか不幸というか可哀相というか……でも笑ってしまう。
 彼らが一堂に会するときには、みなキレる寸前で、ここまでくるとあとはもう坂道を転げ落ちるのみだ。映画にしたらおもしろいだろうなあ。鉄工所のおやじは大地康雄でしょうか。
 新人ということでオマケの星4つ。

★★★★(1999.8.11 黒犬)

[Amazonで奥田英朗を検索][HOME][JAPAN][FOREIGN][Weblog]


last updated : 2005/03/19
mailto : contact?


copyright(c)2003-5 by Dakendo-Shoten.
All rights reserved.